コンクエストなど、魅力的な時計を幅広く取り揃えた。

伝説的なパテック フィリップのリファレンス1518から、トロピカルな文字盤を持つロレックスの金無垢サブマリーナーまで、魅力的な時計を幅広く取り揃えた。またイエローゴールド(メッキではない!)ケースのブライトリング トップタイムや、パワーリザーブインジケーターを搭載したロンジン コンクエストなど、あまり見かけないモデルもある。

ロレックス サブマリーナー Ref.1680/8、トロピカルダイヤル
YGのロレックス サブマリーナーは、アメリカ発のテレビドラマ『マイアミ・バイス』らしさがある(番組内のドン・ジョンソンは、実際はデイデイトを着用していたが)。文字盤がトロピカルになっていて、ゴールドの輝きとよく合っている。当時の非ステンレススティール製サブマリーナーで見られるインデックスの特殊な形状にちなんで、こちらのRef.1680/8には“ニップル”ダイヤルを採用している。ケースは分厚く、オリジナルのブレスレットもしっかりとしていると説明があり、時計には元の購入レシートも付属している(当時の価格が気になるところだ)。裏蓋の刻印を見ると、もともとは軍人のロバート・シッソン(Robert Sisson)中佐が購入したもののようだった。Googleで検索をすると、シッソン中佐は2009年に亡くなり、ベトナムでの任務を含む22年間の勤務のあと、1985年に退役していた。

パテック フィリップ Ref.1518、パーペチュアルカレンダー ムーンフェイズ クロノグラフ
“パテック フィリップのパーペチュアルカレンダークロノグラフは、時計収集の世界でほかに類を見ないほどの王道的な遺産を築き上げている”。この言葉は、ベンがこの素晴らしいパテックについて書いたReference Points記事から引用したものだ。そしてこの系譜は、1941年に連続生産された初のパーペチュアルカレンダークロノグラフであるリファレンス1518から始まる。このリファレンスは10年あまりにわたって提供され、合計281本が販売された。いま見ているのは、文字盤からわかるように1950年代初頭の後期モデルである。というのも、1948年に“&Co”の表記がパテック フィリップによって外されており、いわゆる“ショートサイン”が表記されているのだ。とはいえ、1518の真に重要なのはその美しさである。すべての機能がエレガントな35mm径ケースに完璧に収められ、ムーンフェイズも素晴らしい。この時計は私にとって最高の逸品だし、これまでに製造された時計のなかで、最もエレガントなコンプリケーションウォッチだと思っている。特にアラビア数字が植字されたこのバージョンは素晴らしい。

ホイヤー オータヴィア “エキゾチック” Ref.1563
このオータヴィアのオレンジの配色は、このRef.1563が1970年代のものではないかと疑わせるかもしれないが、そのとおりである。これはホイヤーが1960年代の終わりに、オータヴィアに導入した自動巻きクロノグラフムーブメントからも推測することができる。しかし、このオータヴィアの文字盤はほかのホイヤーとは完全に一線を画している。このモデルは、ユニークな段差のあるハッシュマークを備えていることから“エキゾチック”というニックネームで呼ばれている。さらに今見ている個体はミュージアムに収蔵できるレベルのコンディションを保ち、トリチウムのインデックスには美しいパティーナがあり、この時代のホイヤーでは非常に見つけにくいカミソリのように鋭いケースを備えている。

ロンジン コンクエスト パワーリザーブ
このロンジン コンクエストの文字盤は魅力にあふれている。シルバーの仕上げもとても素晴らしいが、それ以上に重要なのは、非常にスマートな方法でふたつのコンプリケーションを表示しているところだ。まず、12時位置に日付があるが、これは通常の3時配置とは異なり、ダイヤルの対称性を乱すことはない。第2に、時計の針が完全に止まるのを防ぐために、時計を再び着用するタイミングを知らせてくれる、回転式のディスク型パワーリザーブインジケーターが中央に鎮座している。このコンクエストは自動巻きムーブメントを搭載しているため、注意していれば手で巻く必要はない。見たところローレット加工されたリューズはオリジナルではなく、ほかのコンクエストで見られるように、このフォーラムにあるものや、ここで見つけたほかのRef.9035に類似した、ロンジンのサイン入りリューズがオリジナルだと思われる。

ブライトリング トップタイム Ref.2004、ソリッドゴールドケース
ブライトリング トップタイムは私のお気に入りのクロノグラフのひとつで、ジェームズ・ボンドとのつながりがあるにもかかわらず、しばしば見過ごされている(『サンダーボール』でボンドが使っていたガイガーカウンターウォッチは、Qによって改良されたトップタイムだ)。トップタイムコレクションはキャッチーなデザインと、ロレックスとホイヤーが同時期に打ち出したモータースポーツ(タキメーターを含む)の世界を連想させる外観によって、ブライトリングをより若いユーザーにアピールすることを目的としていた。防水性を高めたモノブロックケースのリファレンスもあれば、裏蓋が取り外し可能なクラシックなケースもある。私が思うトップタイムの魅力はその特別な逆パンダ文字盤にある。インダイヤルはこの時期のホイヤー カレラに見られるオールホワイトではなく、シルバーになっている。とはいえRef.2000と2003を筆頭に、市場で見つけることができるトップタイムのほとんどはゴールドメッキだ。しかし、このRef.2004の裏蓋には、18Kゴールド製ケースだという表記が誇らしげに刻印されている。

伝説のCal.135を搭載した、ゼニス クロノメーター
このゼニスは間違いなく、これまでに生産されたなかで最高の手巻きモデルのひとつだ。大胆な発言? そう思うかもしれないが、このCal.135は1950年以降、ヌーシャテルのクロノメーター検定で5回連続で優勝したほど、非常に精度が高いと称賛されたものだ。このキャリバーを見ると困惑することだろう。明確な目的を持った、見事なまでのシンプルさを実現しているからだ。Cal.135は、最高精度を目指してつくられたキャリバーだ。このムーブメントは、非常に大きなテンプ、調整機構、ブレゲひげゼンマイを備えた、直径が大きいムーブメント(仕様では約30mm弱)である。これは、オメガの30T2RGクロノメーターキャリバーと、同じムーブメント設計哲学を反映している。この種のクロノメーター級のムーブメントは、連続生産された天文台用競技ムーブメントのなかで最高の進化形であり、一般的にはここで見られるように、非常に控えめではあるが超高品質なケースに収められる。

文字盤は驚くほどバランスがとれていて、大きなスモールセコンドレジスター(ムーブメントのクロノメーター性能を評価するのに適している)と鋭いインデックスのおかげで、ドーフィン針と驚くほどバランスが取れている。

このゼニス クロノメーターは、Dr.Crott Auctioneersによって提供される。こちらのリストに記載されているように、エスティメートは3300ユーロから5000ユーロ(当時の相場で約41万~62万円)であり、率直に言って、これほど素晴らしく傑出した時計としてはお買い得である(編注:結果5400ユーロ、当時の相場で約67万円にて落札)。

A.ランゲ&ゾーネ ダトグラフ・アップ/ダウン 25周年限定モデル。

ダトグラフの誕生25周年を記念した、ホワイトゴールド製限定モデル。

1999年に発表されたダトグラフはランゲ初のクロノグラフであり、以来、このモデルはランゲにおいてもっとも印象的なウォッチメイキングのプラットフォームとなっている。今回、Watches & Wonders 2024、そしてダトグラフ誕生25周年を記念して、ランゲはホワイトゴールドケースにブルーの文字盤を収めた限定モデルを発表した。わずか125本しか製造されないこのダトグラフは、パワーリザーブを備え、ダトグラフ・アップ/ダウンの現行コレクションにはないケース素材とダイヤルカラーの両方を提供する。

ランゲの30周年記念の一端を成すこの限定ダトグラフ(Ref.405.028)は、現行モデル(プラチナまたはピンクゴールド製、いずれもブラック文字盤)のフォーマットを踏襲している。2018年に200本限定モデルとして発表されたダトグラフ・アップ/ダウン“ルーメン”と同様に、このブルーダイヤルモデルも魅力的なフォーマットを採用した特別な新作として発表された。幅41mm、厚さ13.1mmのRef.405.028は、中央の時分針による時刻表示に加えて、フライバッククロノグラフ、1分ごとにジャンプする経過分表示、2桁のアウトサイズ日付表示、パワーリザーブインジケーターを備えている。操作系では、従来型のリューズ、クロノグラフ用のふたつのプッシャー、そして日付表示のクイックセット用の調整機構が設けられている。

これらの機能はすべて、ランゲの手巻きムーブメント L951.6に組み込まれている。このムーブメントは、2012年のダトグラフ アップ/ダウンのために開発されたものだ(当時の記事はこちら)。約451個の部品で構成されるCal.L951.6は1万8000振動/時で時を刻み、60時間のパワーリザーブを備えている。これはランゲのなかでも特別なムーブメントであり、その大部分はジャーマンシルバー製で、ひとつひとつの部品は(手彫りのテンプ受けにいたるまで)手作業で美しく仕上げられている。

この150本限定のホワイトゴールド製ダトグラフは、まさにランゲコレクターに向けられた特別なモデルだ。そのため、現在ランゲのウェブサイトに掲載されているダトグラフ・アップ/ダウン同様に、価格情報は公開されていない。ランゲに聞いてみたところ、詳しい情報については最寄りの販売店に問い合わせて欲しいとのことだった。

我々の考え
すでにランゲは、ダトグラフ・アップ/ダウンでルーメンという切り札を切っている。そのことを踏まえると、この控えめなブルーダイヤルの時計は、ダトグラフの25回目の誕生日をブランドからのスペシャルな限定モデルで迎えたいというファンに素晴らしい選択肢を提供するためのものなのだろうと思う。確かに話題性という意味では、いまひとつかもしれないが、ホワイトゴールドとブルーのダイヤルはこのダトグラフにとてもよく似合っている。また、その対称的なダイヤルデザインが印象的なこのモデルをじっくりと眺める時間は、いつだって楽しいものだ。

発売から25年が経ったいま、ダトグラフが(ランゲにとっても高級時計のコレクターにとっても)これほどまでに特別な作品である理由がわからないというなら、2020年にコール・ペニントンがHODINKEEに寄稿したこのモデルに関する素晴らしいIn-Depth記事を読むことをおすすめする。ダトグラフはランゲのなかでも特別かつ特異なタッチポイントであり続けており、まだ若いブランドであるランゲをコレクター心をくすぐる格別な存在へと押し上げている。A.ランゲ&ゾーネが30歳の誕生日を迎えるにあたり、ダトグラフと過去25年間にわたるブランドの歩みに敬意を表そうとするのは当然のことだろう。

基本情報
ブランド: A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Söhne)
モデル名: ダトグラフ・アップ/ダウン 限定モデル(Datograph Up/Down Limited Edition)
型番: 405.028

直径: 41mm
厚さ: 13.1mm
ケース素材: ホワイトゴールド
文字盤色: ブルー
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブルーのアリゲーターストラップと18Kホワイトゴールドのピンバックル

ムーブメント情報
キャリバー: ランゲ製L951.6
機能: 時・分表示、スモールセコンド、センターフライバックセコンド付きクロノグラフ、ジャンピングミニッツ、パワーリザーブ表示、グランドデイト表示
直径: 30.6mm
厚さ: 7.9mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時(2.5 Hz)
石数: 46