アルビスホルン×マッセナLAB、ある時計が発表された。

アルビスホルン×マッセナLAB(Albishorn×Massena Lab) マキシグラフこそ、その時計である。最初のリリースを単体ではなくコラボレーションとしたのは大胆な戦略的選択だが、アルビスホルンはすぐに航空にインスパイアされたタイプ 10を単体で発表した。セリタ社のセバスチャン・ショルモンテ(Sébastien Chaulmontet)氏が設立したアルビスホルンがHODINKEEに登場するのは今回が初めてではない。

しかもこのマキシグラフは昨年夏のGeneva Watch Daysにおける我々のお気に入りリスト入りを果たしている。多くの人が、業界にとって低調な年と評したなかで、この時計は私には一服の涼と映った。当然、私は数日間この時計と一緒に過ごし、実物がどのようなものかを確かめたいと思った。

アルビスホルンを初めて耳にする人のために言うと、ウブロスーパーコピー時計n級品 代引きこのブランドはヴィンテージに触発された時計を製作している。ただしヴィンテージの復刻にありがちなアイコンの再現でもなく、インスパイアされたものでもない。“イマジナリーヴィンテージ”というアルビスホルンのトレードマークがそれをよく表している。ヴィンテージウォッチのデザイン原則を活用して、ほかにはない個性を感じさせるモダンウォッチをつくるというコンセプトだ。まだ2モデルしか発表されていないため、このコンセプトが支持されるかどうかを判断するにはほかのリリースを待たねばならないとは思うが、私はすでにとても興味をそそられ、傾倒してしまっている。

マキシグラフは、本質的にはモノプッシャーのレガッタクロノグラフである。ブランドの語るストーリーを少し紹介すると、これは1939年に初めて開催されたボルドール・デュ・レマンのためにブランドがデザインしたであろう航海用クロノグラフだという。

文字盤にはヴィンテージの特徴が容易に見て取れる。鮮やかな色でプリントされたミニッツトラックとアワートラックがセクター文字盤を埋め尽くしている。すべてのトラックは、微妙に異なる太さやスタイルで表現され、中央のメタリックなトラックが味わい深いアクセントだ。これらのリングからは、この時代のマルチスケールダイヤルによく見られる賑やかなヴィンテージクロノグラフのような印象を受けるが、このモデルではより現代的ですっきりとした美しさも感じられる。スーパールミノバが文字盤上に描く2本のアーチは非常に繊細で、見逃しやすいディテールであろう。これらはすべてボックス状のサファイア風防の下に配されている。

アルビスホルンによる夜光塗料の描写。

文字盤内側のスケールには、10分間のカウントダウンスケールとランニングインジケーターという、おそらく一番興味深いパーツが配置されている。マキシグラフでは、スモールセコンドを省略し、カウントダウンスケールの横に小さな窓を設けた。この窓にはディスクが収められ、青、赤、緑に順に回転することで、クロノグラフを作動させなくても時計が正しく動いていることがわかるようになっている。この種のインジケーターは新しいコンセプトではないが、マキシグラフのものは非常によくできており、時間を確認するたびに色が変化するのを待つのはとても魅力的だと感じた。

マキシグラフの最大にして最もユニークな特徴は、緑色のトラックと赤い針を備えた10分間のレガッタカウントダウントラックである。そしてこれは、アルビスホルンが新しい時計をつくり続ける限りもたらしてくれるであろうものの、いい“インジケーター(指標)”(ダジャレではない)でもある。典型的なレガッタクロノグラフは、カウントダウンが終わってもその表示を繰り返すが、マキシグラフの場合、10分が経過するとレガッタタイマーは停止してカウントダウン針は“0”の位置で静止し、メインのクロノグラフ秒針は動き続ける。クロノグラフがリセットされると、分表示もクロノグラフ秒針も元の位置に戻る。

ステンレススティール製ケースは直径39mm、厚さ13mmと非常に現代的で、それよりも大きな41mmの両方向回転式SSベゼルを備えている。凹型のベゼルは操作しやすく、十分な抵抗感でスムーズに回転し、黒と赤で着色されたアワートラックとミニッツトラックが刻印されている。10時位置に配されたリューズには、美しいコントラストのビーズブラスト仕上げでアルビスホルンのロゴが大きく刻まれている。鮮やかな赤のアルミニウム製クロノグラフプッシャー(この素材を選んだのは、この彩度の高いアルマイト処理を実現するためだったのだろう)はアグレッシブな稜線を持つ9時位置にあり、操作感は抜群だ。

アルビスホルンによると、マキシグラフは約64時間のパワーリザーブを備えた独自の自動巻きキャリバーを搭載している。ショルモンテ氏のムーブメント開発経歴は非常に豊かで、とくにクロノCOS(クラウンオペレーションシステム)でリチャード・ハブリング(Richard Habring)氏と共同特許を取得したバルジュー7750には定評があり、最も大きな功績のひとつでもある。ラ・ジュー・ペレ社や現在のセリタ社での経験も言うにおよばない。彼の専門性は、この新しいキャリバーが部分的には7750の構造に依拠しているものの、それとは大きく異なり、セリタ社の既存カタログには含まれていない完全オリジナルのものだ。標準的なバルジュー7750ムーブメントの厚さが7.9mmであるのに対し、マキシグラフのキャリバーは延長された約64時間のパワーリザーブ、モノプッシャーの改良、特許取得のレトログラードレガッタカウントダウンを備えながら、6.6mmに抑えられている。実際に手にしてみると、クロノグラフの動作は7750よりもかなり滑らかに感じられた。そのため最初は7750との関連性にまったく気付かず、感心させられた。

時計を裏返すと、ケースバックにはアルビスホルンとマッセナLABのロゴ、そして1939年に第1回ル・ボルドールを受賞した6メートルヨット、イリアムIV号の製図風アートワークが刻印されている。赤いトロピックスタイルのラバーストラップと白いカーフレザーストラップの両方が付属するが、私は100m防水の時計にはラバーストラップが間違いなく適していると感じた。左右非対称のロゴ入りピンバックルもいい味だ。

マッセナLABのコラボレーションのほとんどが完全限定生産であるのに対し、マキシグラフは1バッチごとに25本程度の“限定生産”として発表された。確かにマキシグラフは4995ドル(日本円で約80万円)と、安価な時計ではない。しかしともに時間を過ごしてみて、とくに製造の背景を考慮すると、決して高い価格設定だとは思わない。この希少性は意図的につくり出されたものでもない。このキャリバーに要求される調整と精密さは、手作業の少量生産によってのみ達成可能なのだと、ショルモンテ氏は教えてくれた。快適に着用できるサイズでユニークなムーブメントを搭載した、斬新なレガッタタイマーが5000ドル以下というのは、このセグメントにあって非常にフェアな試みだと思う。市場でこれに似たものを見つけるのは難しいだろう。

ウィリアム・マッセナ(William Massena)氏に、この時計がいつまで生産されるのか聞いてみたところ、おそらく今年いっぱいは生産されないだろうとのことだった。マッセナ氏は、「私は、生産中にほとんどの人に見過ごされがちな、少量生産の個性的な時計が大好きなのです」と語った。アルビスホルンとマキシグラフの両方を初期から支えてくれるサポーターに、のちのち隠れた名作として報いる限定生産のアイデアの源泉として、ホイヤーのマレオグラフやジン EZM 1のような、コレクターに愛される時計について言及した。これは確かに興味深い戦略であり、この非常に魅力的な時計は目指した目的をしっかりと果たしており、戦略がうまくいく可能性は十分にある。

アルビスホルン×マッセナLAB マキシグラフ。ケース径39mm(ベゼル41mm)、厚さ13mmのステンレススティール製。100m防水で、モノプッシャークロノグラフと特許取得の10分カウントダウンレガッタタイマーを備えた独自の自動巻きキャリバーを搭載。数量限定生産で、マッセナLABの公式ウェブサイトで販売。

ディオール(DIOR)2025年秋の新作ベースメイク「プレステージ マイクロ フルイド タン」が新登場。

“ローズ生まれ”のプレミアム美容液ファンデーション
ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
ディオールスーパーコピー「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
“ご褒美スキンケア”として愛される「ディオール プレステージ」シリーズから、新しいリクイドファンデーションが誕生。ベースメイクでありながら“スキンケアのために生まれた”薔薇「グランヴィル ローズ」の恵みたっぷりで、美容液のように、いきいきと輝きあふれる肌へと導いてくれる。

“お疲れ肌”のくすみをケア
ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
「プレステージ マイクロ フルイド タン」の鍵を握るのは、肌のくすみに関するディオール独自の科学的発見。赤みや乾燥感など、疲れた印象を与える肌のサインは“カリウムの不足”が由来していることを新たに見出した。

ディオール2025年ベースメイク、肌くすみケアの“ご褒美”美容液ファンデーション|写真5
このカリウム不足にアプローチするのが「グランヴィル ローズ」。このローズには微量栄養素がぎゅっと詰まっていて、カリウムを豊富に含んでいるという。グランヴィル ローズ生まれの「ニュートリ ローズ ペプチド」を配合したファンデーションは、メイクしながら、疲労サインやストレスから肌を回復させ、健やかな肌状態へと整えてくれる。

肌色問わず溶け込んで均一肌へ
中央) ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
中央) ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
また、ファンデーションには「イルミネーティング マイクロ パール」と呼ばれる、2層構造のパールを起用。ヌードカラーを血色感のあるロージーカラーでコーティングしたパールを使用することで、肌への溶け込み感がぐんとアップ。イエベ、ブルべなどのパーソナルカラーやアンダートーン問わず均一になじんで、肌色を補正。シルクのような仕上がりを叶えてくれる。

右) ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
右) ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
テクスチャーは軽く、なめらかに広がるので、テクニックレスで毛穴などの肌悩みをカバー。肌のうるおい感は長く続き、高温多湿の環境下でも長時間ツヤ肌をキープしてくれる。SPF30 PA+++で紫外線などからも肌を守ってくれるのもいいところだ。

【詳細】
ディオール「プレステージ マイクロ フルイド タン」SPF30/PA+++ 全5色<ブラシ付き>各18,480円
発売日:2025年9月5日(金)予定

【問い合わせ先】
パルファン・クリスチャン・ディオール
TEL:03-3239-0618

ウブロからビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック グリーン SAXEMが新登場

大胆で複雑、そしてカラフルな時計を発表するタイミングだということだ。2025年にマキシマリズムを推している者として、これは褒め言葉として言っている。ビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック グリーン SAXEMは、この記事とこの記事で紹介している、ウブロ独自のサファイアに似た素材SAXEM(サクセム)がさらに進化したモデルだ。この素材はサファイアと同様の硬さと透明度を持ちながら、その組成により強烈な色をより簡単に引き出せる。またウブロによれば、“希少な宝石のように鮮やかに”輝くのが特徴だ。

ひとつの記事にSAXEMという言葉を何回使えるのか。それを知る方法はひとつしかない。

hublot saxem green
SAXEMケースとサファイアクリスタルケースを直接比較する機会はなかったが、昨年、イエローネオンSAXEMのビッグ・バンを試着するチャンスがあった。その鮮やかさは、注意書きが必要なくらいだったかもしれない。実際に試着したのは、ウブロのコラボレーターであるアーティスト、ダニエル・アーシャム(Daniel Arsham)氏のビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック イエロー ネオン SAXEMで、ウブロ推奨のモノクロームイエローのストラップではなく彼は黒いストラップを合わせていた。これがヒントになり、ブランドはブラックストラップ付きのグリーン SAXEMを発売したのだろう。

ビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック グリーン SAXEMは、私のなかの架空のパントーンチャートで“Goblin(ゴブリン)”と“Perrier(ペリエ)”の中間に位置する。この色について、ウブロはかなり控えめにエメラルドグリーンと名付けている(ミュージカル『ウィキッド』×ウブロのコラボがあれば絶好の機会だっただろう)。真の色味を知るにはWatches & Wondersまで待つ必要があるかもしれないが、ひとつだけ確かなのは地味な色ではないということだ。

Hublot SAXEM green Big Bang
44mm(前回のビッグ・バン ウニコ グリーンSAXEMより2mm大きい)のポリッシュ仕上げのグリーン SAXEMケースには、ウブロの自社製オートマティックトゥールビヨンムーブメント、MHUB6035が搭載されている。このキャリバーの特徴は文字盤側の12時位置に配置された22Kゴールド製のマイクロローターで、約72時間のパワーリザーブを提供することだ。ムーブメントの現代的な設計では、香箱受け、自動巻き機構のブリッジ、トゥールビヨンバレッタという3つの機能的なサファイア製要素がアクセントとなっている。さらに、ワンミニッツトゥールビヨンキャリッジが6時位置に配置されているのも特徴的だ。価格は3164万7000円(税込)で、18本限定だ。

我々の考え
2025年はビッグ・バンの20周年にあたる。この1年を通じて、さまざまなモデルが次々と発表されることはほぼ間違いないだろう。2000年代初頭の個性的で大きな時計のファンであり、その時代らしい大胆な精神性に心を奪われた私としてはこれ以上ないほどワクワクする話だ。ただし、ほかの人にとってはそこまで魅力的ではないかもしれない。それでもウブロのよいところは、その仲間にならなくてもこのお祭りを楽しめる点にある。

Hublot Big Bang SAXEM Green details
傍観者としてウブロを楽しむのも十分アリだ。仮にあなたがエクストラプラットな時刻表示のみのドレスウォッチや、QP(永久カレンダー)を好むタイプの人だったとしても、この異端的なスイスウォッチブランドが放つ陽気で大げさな魅力に引かれても問題ない。グリーンの気配をまとった穏やかな好奇心に身を任せ、その仰々しさを受け入れよう。凝り固まった外見から解放されよう。世間の目なんて気にしない。ウブロを見習って、逆境に負けない楽観主義を手にしよう!

カラフルで存在感あるデザインと、それに見合う価格の時計を生み出すことにかけて、ウブロには怖いものがない。誰もが小振りなSAXEMを夢見るかもしれないが、心の奥ではそれがSAXEMの本質を失ってしまうことをわかっている。SAXEMは派手なXLサイズでこそ、真価を発揮する時計なのだ。

hublot saxem green
基本情報
ブランド: ウブロ(Hublot)
モデル名: ビッグ・バン トゥールビヨン オートマティック グリーン SAXEM(Big Bang Tourbillon Automatic Green SAXEM)
型番: 429.JG.0110.RT

直径: 44mm
厚さ: 14.4mm
ケース素材: ポリッシュグリーンSAXEM
夜光: あり
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ライン入りブラックラバーストラップ(ブラックセラミック&ブラック加工のチタン製フォールディングバックル)、グリーンの透明裏地付きラバー&ブラックベルクロ付属(マイクロブラスト加工のブラックセラミックスポーツバックル)

ムーブメント情報
キャリバー: MHUB6035
機能: 時・分表示、トゥールビヨン
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 26
追加情報: サファイアでできた3つのブリッジ、22Kホワイトゴールド製のマイクロローター、スイス式レバー脱進機

価格 & 発売時期
価格: 3164万7000円(税込)
限定: あり、世界限定18本

ロレックスはアメリカ市場を見据え、“ル・マン”ではなく“デイトナ”を選んだ。

ロレックスの歴史において、なぜコスモグラフは“ル・マン”ではなく、“デイトナ”となったのか。その由来はアメリカ・フロリダ州のデイトナビーチにあるデイトナ・インターナショナル・スピードウェイとの結び付きを強めたことにある。

ロレックスはコスモグラフ発表以前の1930年代から数々のクロノグラフを手がけてきた実績があるが、この分野では長年苦戦を強いられていた。1963年のRef.6239の登場によって、ロレックスのクロノグラフは大きな方向転換を迎える。当時のアドバタイジングで確認できるル・マンの名を冠したモデル名、ロレックスでは初のタキメータースケールを搭載したベゼルは、華やかなカーレースシーンへの参戦表明と言っていいものだった。そしてもうひとつ言えることは、このいわゆるル・マンの発表時において、ロレックスとル・マン24時間レースとのあいだには直接的な関係はなかったと思われるが、それから数十年後、ル・マン24時間レースの勝者にコスモグラフ デイトナが贈られるようになったことは、実に興味深い事実であると思う。

「未来とは、今である」。目の前のことに全力を尽くすことで未来は開ける。今の頑張りが未来を創るという意味を込めたアメリカの文化人類学者のマーガレット・ミードの名言だが、まさにロレックスのたゆまぬ努力は確かな結果を残したのだ。

前述のとおり、1964年からロレックスは世界最大級のマーケットであった北米市場に向けて、文字盤に“DAYTONA”のプリントを入れたRef.6239を投入し始めるが、この戦略がマーケティングとして功を奏して、コスモグラフは成功への道筋を歩むことになる。時計、クルマ、ファッション関連を中心に、古い雑誌やポスターなどを取り扱うアド・パティーナの創業者であるニック・フェデロヴィッチ氏による、ル・マンおよびデイトナに関するアドバタイジングへの考察は以下のとおりだ。

「ル・マンの広告が最初に打たれたのは1964年ごろだと推測しますが、この時点ではデイトナとは呼ばれていなかったことは確かだと思います。翌1965年の広告から正式にデイトナというモデル名が記載されるようになりました。古いロレックスの広告を調べていくにつれて解明できたことは、掲載されている時計の年式と広告が打たれた年は一致しないことです。私たちのようなコレクターやマニアは、時計のディテールにこだわりますが、当時の広告において厳密な表現はさほど重要ではなく、そのモデルの主立った特徴を見せることに重点を置いていた傾向が見られます」

 時計の説明よりも、むしろカーレースやスポーツカーの写真を巧みに使いながらイメージを刷り込むことで、ロレックスはレースの世界との距離を縮めたのだ。

 このようなブランディングと並行して、1965年に登場したねじ込み式のクロノグラフプッシャーを初採用したプロトタイプ Ref.6240の登場をきっかけに、コスモグラフは段階を踏みながら機能性を高め、防水クロノグラフへと変身を遂げて独自路線を追求していく。

1966年に打たれたロレックスの広告。サブマリーナーならダイビング、ロレックスならスポーツカーなど時計とマッチした背景を使うことで、それぞれの世界を写真を使って表現した。

過酷なレースで育まれたレーシングクロノグラフ
 北米市場に迎えられたコスモグラフ デイトナは、ここから新たな物語を紡いでいくわけだが、これに関連する話題とともに、ロレックスならではの防水クロノグラフが完成されるまでのヒストリーもル・マンと同様、極めて興味深い。

 コスモグラフ デイトナが台頭した1960年初頭、カーレースは新たな時代を迎えて、かつてないほどの熱気に包まれていた。この時代のレーシングカーへの造詣が深く、希少なクラシックカーを販売するコーギーズのオーナーである鈴木英昭氏に、1960年代のル・マン24時間レースについて話を聞くことができた。

ル・マン24時間レースの競技はフランス中部にあるル・マン市のル・マン24時間サーキットで行われていた。写真は1925年から始まったル・マン式スタートの様子。シートベルトを閉めないドライバーが多かったため、1971年から通常のローリング式スターティングを採用するようになった。

デイトナ24時間レースは、ル・マン24時間レースの形式を踏襲しているが、高速オーバルコースの特性に加え、途中に組み込まれたテクニカルセクションが存在することからマシンやドライバーにかかる負担の大きいレースである。バンクではマシンに外方向と下方向でのGがかかることからサスペンションのセッティングにも苦心したという。

「この時代は、空気抵抗の測定精度が向上したことで、レーシングカーのデザインが劇的に変わります。ル・マン24時間レースでは、フォードがフェラーリを買収しようと試みたことから両社の対立が始まり、1960年から1965年までフェラーリが6連勝を飾る一方、フロントエンジンからミッドシップエンジンに切り替わり、戦力を増強。1966年はフォード GT40が初めてフェラーリを打ち負かして4連勝しますが、1970年には徐々に実力を高めてきたポルシェが初勝利します。1969年からレースで使用したポルシェ 917を見ればわかるように、レースの世界では当然のこととして認識されていますが、かつて大活躍したフェラーリ 250TR(テスタロッタ)のようなデザインはこの頃には一切見当たらなくなります。アメリカにおけるレースシーンはというと、1962年からデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開始されたデイトナ24時間レースは、まだ知名度は低かったのですが、レースの報酬が高かったことを理由に、ヨーロッパから多くのレーサーが参加するようになりました」

 同じ時代、レースの世界を走り始めたコスモグラフ デイトナにおける進化の過程はレースに相通じるものがある。苛烈を極めたデイトナ24時間レースを耐え抜くためにレーシングカーはスタイリングを洗練させ、スペックを高めていった。そんなレースにふさわしいクロノグラフとしてコスモグラフ デイトナに求められたのは耐久性を高めること。特に当時のクロノグラフ全般の弱点であった防水性能の向上だった。1965年に登場したRef.6240はプロトタイプのねじ込み式クロノグラフプッシャーを採用し、1969年から登場した(1970年、71年とする説もある)Ref.6263は、それを正式に採用したモデルだ。12時位置のプリントの2行目には、防水性能を示した“OYSTER”の文字が加わる。このRef.6263の製造が1989年まで続いたことからもクロノグラフとしての信頼性の高さがうかがえる。

 さらなる完璧さを求めたロレックスは、40㎜径のオイスターケースにリューズガードを与え、初の自動巻きクロノグラフムーブメントとなるCal.4030を搭載したRef.16520を1988年に発表する。文字盤の2行目のプリントには、“OYSTER”のほかにデイトナ初となる“PERPETUAL”の表記が入る。このアップデートの結果、コスモグラフ デイトナはクロノグラフという複雑機構でありながら、そのほかのプロフェッショナルモデルと同等クラスの防水性能や耐久性を手に入れた。もうひとつ、コスモグラフ デイトナとカーレースの結び付きを考察するうえで、俳優ポール・ニューマンの存在はやはり欠かせない。ご存じのように、レーシングドライバーとしても活躍した彼の腕には手巻きのコスモグラフ デイトナがよく巻かれていた。そのため彼が身につけていたエキゾチックダイヤルと呼ばれる文字盤が入るコスモグラフ デイトナは、のちにポール・ニューマン モデルと呼ばれるようになるわけだが、その人気は衰え知らずで現在も価格の高騰が続いている。

 つまるところ、カーレースの世界や第2次世界大戦後にアメリカの好景気が絶頂を迎えていた北米市場に勝機をみいだしたロレックスのマーケティングは、結果論として正解だったわけだ。歴史に“もしも”はないが、ロレックスがデイトナではなく、ル・マンへの道を目指し続けていたとしたら、コスモグラフと名付けられたクロノグラフの運命は、今とはまったく違う道を歩んでいたかもしれない。

ヴィンテージロレックスの頂点に立つ手巻きデイトナ。

ヴィンテージロレックスには謎めいたモデルが非常に多い。オークションハウス、熱狂的なコレクター、有力なヴィンテージウォッチ専門店らの熱心な研究によって、徐々にその真相が解明されている。ポール・ニューマンダイヤルの人気に支えられ、“キング・オブ・クロノグラフ”として市場に君臨するコスモグラフ デイトナの手巻き時代のリファレンスも例外ではない。Ref.6240の文字盤に“ROLEX”とだけ表記される通称“ソロ”がその好例で、不確定要素が多いことから数年前と比べて価格が落ちている。それどころか現在では、ソロダイヤルはRef.6238に入るという話が有力視されているそうだ。対照的に人気が安定しているモデル、評価が上がり続けているモデルというのも存在している。ここ最近のオークションでは、バゲットカットのダイヤモンドベゼル、ダイヤモンド&サファイアのパヴェダイヤルを備えたRef.6270が日本円にして約5億6000万円で落札されたことは記憶に新しい。

なかでも最初期型のRef.6239、上の古いアドバタイジングに掲載された“ル・マン”と呼ばれるモデルは、コレクターたちの研究によって“再発見”されたことで注目されるようになったと言っても過言ではない。2013年にHODINKEE創業者のベン・クライマーはRef.6239のファーストモデルに関する記事を執筆しているが、当時のコレクターたちの認識では、変わったディテールを備えてはいるものの、デイトナ表記のない最初期型モデルという程度。ごく一部のコレクターがその存在を知っているくらいであり、今ほど注目を集めるようなものではなかった。2017年10月にフィリップスがコスモグラフ デイトナをテーマにしたオークション『ウィニングアイコンズ』を開催したが、ヴィンテージロレックスの世界でル・マンの存在が知られるようになり、コレクターたちがざわつき始めたのは、このオークションからさかのぼること数年前の2015年ごろだったと記憶している。とある雑誌の取材を通じて、国内屈指のヴィンテージロレックスのメガコレクターが所有する実機を初めて見たのだが、華やかなポール・ニューマンダイヤルとは真逆をいくシンプルなデザインに筆者の心は動かされ、のちにRef.6239を購入するきっかけになった。非防水のポンプ型クロノグラフプッシャーを装備したおよそ36.5mm径のケースは、ねじ込み式の防水クロノグラフプッシャーを採用したRef.6263などのモデルとはひと味違う魅力があったのだ。

『ウィニングアイコンズ』でポール・ニューマン本人が所有していた個体が約20億円で落札されて以来、手巻きのコスモグラフ デイトナ全般の価格が飛躍的に上昇し、人気は絶頂を迎えた。その一方でヴィンテージモデルにはより厳密にオリジナリティが求められるようになった。それはル・マンについてもしかりで、たとえ文字盤が正しいものであっても、全体のオリジナリティが損なわれていれば、評価は激減する。それとは対照的に、パーツの整合性が取れた個体の評価は高く、良質な個体に関しては価格は安定している印象だ。

競合だったオメガやロンジンと争い、そして“コスモグラフ”という造語から察するに、当時の宇宙開発競争にも乗り出していたであろうコスモグラフ デイトナ。カーレースの世界に参入することに勝機をみいだしたロレックスの威信をかけたこのレーシングクロノグラフは、発表から数十年の時を経て、有識者たちに“再発見”されたことで、改めて特別な輝きを放つに至った。

生粋マニアによるル・マンのディテール解説

フォーミュラ1のモナコグランプリ、アメリカで開催されるインディアナポリス500と並び、世界3大レースのひとつに数えられるル・マン24時間レースは、フランスのル・マン近郊で行われる四輪耐久レースである。2023年は、この偉大なレースの100周年を数えるアニバーサリーイヤーであると同時に、コスモグラフ デイトナ誕生60周年にあたる節目の年でもある。これを記念して、ロレックスはコスモグラフ デイトナ 18Kホワイトゴールド仕様のスペシャルエディション、Ref.126529LNを発表し、世界中のデイトナファンを熱狂させた。

今でこそ世界で最も有名なクロノグラフとなったコスモグラフ デイトナだが、成功までの過程は決して平坦な道のりではなかった。とりわけ手巻き時代のデイトナのディテールの変遷には、かつてない防水クロノグラフを目指し、ロレックスの開発チームが試行錯誤していた痕跡が見られる。ル・マンはロレックスにおけるレーシングクロノグラフの原点となった存在で、そもそも前述の古い広告のなかで“ロレックスの新しいクロノグラフはル・マンと呼ばれている”という一文とともに掲載されていたことに由来する、デイトナのファーストモデルであるRef.6239の最初期型につけられた通称だ。ル・マンの文字盤にはブラックとクリームホワイト(後者は特に希少性が高い)があり、1963年にのみ製造された。それゆえ、希少性においてはポール・ニューマンダイヤルを上回る。ヴィンテージロレックスに特化した専門店リベルタスのスタッフである中嶋琢也氏の見解によると、ル・マンの主な特徴として、以下のポイントが挙げられるという。

「ル・マンとほかのRef.6239では使用しているパーツに大きな違いがあります。そのひとつがステンレススティール製のタキメーターベゼルです」

Ref.6239の製造期間は1963年から1970年と比較的長い。その理由から製造年によって細かなディテールの違いがある。ベゼルは3種類あり、ル・マンに装着される時速300kmまで計測できる最初期のタキメーターベゼルには、そのほかのベゼルにはない“275”の数字が刻まれる。

「文字盤の6時位置にある“ダブルスイス”と呼ばれるふたつのSWISS表記、長く細い時・分針、これらもル・マンならではの特徴です。クリームホワイト文字盤について言及すると、クロノグラフ秒針がブルースティールのものもあり、デイトナの歴代モデルのなかでも際立った存在があります。“92…”から始まる6桁のシリアルナンバーであることも確認すべき重要事項です」

これ以外にも、夜光塗料にトリチウムを使用したことを意味する12時位置の“アンダーバー”の表記もマニア心をくすぐるデザインとして人気がある。

自身もブラックダイヤルのル・マンを所有する中嶋氏は、その魅力について次のように語ってくれた。「これはデイトナだけではなく、サブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスターなどのファーストモデル全般に共通することですが、ロレックスの開発に対する意気込みがひしひしと伝わってきますよね。ル・マンについては、ただただ美しいと感じる優れたデザインに引かれています」