リスタートから2年が経ってからの完全新作。

880 メカニカルは、国産のファースト“フライヤー”GMTとして価値のあるモデルだ(少なくとも僕にとっては)。

イベントで、GMTウォッチを検討しているという男性と話をした。すでにダイバーズ、クロノグラフ、パイロットとほかのカテゴリでは意中の時計に出合っているものの、GMTウォッチにおいてはそもそもまだ手にしたことがなく、ファーストGMTとして何を選ぶか迷っているのだという。僕自身も(旅行需要の回復を見越してか)各ブランドからリリースが続いているなかで関心が高まっていたところだったので、このテーマでしばし盛り上がった。GMTウォッチを特に機械式時計で探す場合、その入り口のハードルはまだまだ高いように感じている。クロノグラフやダイバーズなどほかのカテゴリと比べてそもそもの選択肢が少ないうえに、トゥルーGMT……、

GMT針だけ独立して調整可能なタイプのGMTウォッチ。詳しくはこちらから)を求めるなら予算に多少の余裕も必要になる。だからこそみんな、出来のいいフライヤーGMTウォッチが30万円以下で発表されると聞けば我先にと飛びつくし、同じプライスレンジにあるモデルと積極的に比較をしたがるのだ。

ゆえに、2021年に再始動してからまもなく2年が経とうとしているシチズンのシリーズエイト(Series 8)から、フライヤーGMTがリリースされると聞いたときは胸が躍った。過去のモデルを見ている限り30万円以下で提供される可能性は高かったし、何より870メカニカルなどでも見られた工業プロダクト的なある種そっけないデザインは僕の大好物だ。おそらく「880メカニカル」は僕のファーストGMTウォッチになるぞと期待をしながら、対面の日を指折り数えていた。

ブラック文字盤に黒×青のツートンベゼルを備えたRef.NB6031-56E。

すでにジェームズによるIntroducingもあるが、簡単に紹介しておく。880 メカニカルはシリーズエイト(Series 8)再始動から実に2年越しの完全新作だ。ブラック文字盤とブルー文字盤の通常モデル2型(ともに税込22万円)と、ゴールドカラーの限定モデル(税込24万2000円)の計3型でこの秋に展開される。いずれもモダン&スポーティな機械式時計ブランドを標榜するシリーズエイトのコンセプトにのっとり、エッジの立った金属感の強いSSケース&ブレスを備え、シチズンによる自動巻きムーブメント9054を搭載している。ケース径は41mmで、厚さは13.5mm。870 メカニカル(10.9mm)や831 メカニカル(10.1mm)と比較すると若干厚みが出ているものの、GMT機構や両方向回転ベゼルが追加されていることを考えれば許容できる範囲だ。

さて、具体的な掘り下げを行う前に告白しておきたい。880メカニカルの実物を初めて目にしたとき、実は素直に飲み込むことができなかった。というのも、880 メカニカルはこれまでのシリーズエイトの文脈から少し外れたところにあるように見えたのだ。僕はシリーズエイトのGMTモデルと聞いて、フラットな文字盤にワントーンのメタルベゼルを備えた(それこそエクスプローラー IIのような)ソリッドなモデルを想像していたし、それに近しいものが提供されると勝手に思い込んでいた。だが、今回の880 メカニカルがシリーズエイトのGMTウォッチとしてどこを目指したモデルなのか、一度冷静になって思案を巡らせていると自分なりの答えが少しずつ見えてきた。結論から言うと、これはまさにシリーズエイト、ひいてはシチズンらしさを詰め込んだ、国産機械式フライヤーGMTのエントリーモデルだ。

SS素材にゴールドIPを使用した世界1300本限定モデル。

GMTウォッチ入門者を狙い撃ったデザイン
880メカニカルは特に通常モデルに関して、ベゼルに実に潔い配色がなされている。いわゆる“ペプシ”であり、“バットマン”だ(限定モデルのゴールドを“ルートビア”とする声もある)。思わずニンマリとした人も多いことだろう。僕は改めて880 メカニカルと向き合ったとき、これは実にシチズンらしい手法だと思った。

そもそもシリーズエイトのリブランディングにあたり、シチズンが掲げたキーワードは“モダン・スポーティ”だった。企画当時に興っていたファッションのカジュアル化、スポーツウォッチ需要の高まりを受けて導き出されたもので、830・831・870メカニカルに共通するブレスレット一体型の構造やエッジを立てたケース形状に色濃く現れている。これは2020年ごろに引き続きトレンドの中心であったラグジュアリースポーツ的な時計作りをわかりやすく(2体構造のベゼル、白蝶貝ダイヤルなどの味付けがあったとしても)表現しており、8年の時を経てのシリーズエイト再始動にあたって、時計愛好家と機械式時計入門者の別を問わず人々の耳目を集めるのに十分な役割を果たしていたと思う。

そう考えると、2年ぶりの完全新作であり、GMTウォッチトレンドのさなかに発表される880 メカニカルがそのエントリーモデルとなるにあたり、この配色をとったことにも納得がいく。これはGMTウォッチのアイコンとして万人がひと目で理解できるデザインだ。今後、異なるベゼルのバリエーションが登場する可能性があったとしても、初手としては間違いない選択だろう。

ベゼルのカラーリング以外にも、880 メカニカルに込めた意図が読み取れるディテールがある。例えば、シースルーバックの採用だ。これは、よっぽど緻密なあしらいを施したムーブメントを搭載した場合か、もしくは何かしらのカテゴリでエントリーモデルとしてリリースされるときに多く見られる、機械式時計に対する所有欲をわかりやすく刺激する手法である。過去のシリーズエイトでは、時計本体の厚みやそこから派生するつけ心地を考慮してソリッドバックが装備されていた。今作はムーブメントとして新開発のCal.9054を搭載してはいるが、美観のうえでの大きなアップデートは見られない。それにもかかわらず今作でシースルーバックを採用した点には、機械式時計入門者にも改めてアピールしたいという意図が感じられる。ソリッドバックを採用することで、この価格帯でのライバル、ミドー オーシャンスター GMTの厚さ13.3〜13.4mmに肉薄することができたかもしれない(880メカニカルは13.5mm)。しかし事実、機械式時計入門者ではないものの、GMT初心者の僕は少なからずワクワクした。

また、ブレスレットにも注目したい。880 メカニカルのブレスは、テーパーが入ったことで既存のシリーズエイトのそれとは性格が異なるものとなった。ぱっと見では小さな変化だが、これによりさりげないドレス感が生まれている。ひとコマひとコマに施された丁寧な研磨が醸し出す高級感も手伝い、同機を大人の仕事着にもマッチする1本に引き上げている。

880 メカニカルでは、限定モデル以外のシリーズエイトでは初めてシースルーバックが採用された。

なお、やはり880 メカニカルがシリーズエイトの流れにあるのだと強く実感するポイントもあった。それが、2体構造なども利用した繊細かつ立体的な磨き分けだ。例えば870 メカニカルでも、ベゼルを2体構造としてそれぞれに異なる処理を行うことで、正面の顔に奥行きが出るように配慮されていた。下の写真を見てもらえばわかるが、880 メカニカルにもその効果は如実に現れている。880 メカニカルではケースそのものを2体構造とし、ヘアラインの“キメ”や向きを変え、エッジにポリッシュを施すことで、サイドにも立体的で見応えのある美観を獲得した。個人的には、リューズに目立つロゴや刻印を刻まなかったことも賞賛したい。このビューの主役はあくまで緻密な磨き分けにある。

そして、シリーズエイトらしい工業製品感を強調するブレスのエッジの立て方、粗くかけられたヘアラインも同様だ。880 メカニカルがちゃんとシリーズエイトの文脈にあると再認識させてくれる。

ピッチが異なるヘアラインの繊細な使い分けは、2体構造のなせるワザだ。

あえて今項を最後に持ってきた。880 メカニカルにおいてもっとも象徴的なディテールである、ダイヤルのあしらいについてだ。ブランドいわく、日本的な紋様である市松模様に東京の夜景、立ち並ぶビル群を掛け合わせた柄だという。なるほど、確かに中心から左右対称にランダムな凹凸が広がっている。シチズンが施した都市型チェッカーは、強化ガラスをインサートしたベゼルの存在を考慮したものだろう。ベゼルが鮮やかに光を反射する分、ダイヤルは場所に応じてやや控えめに主張をする。このバランスを狙ってどれだけの調整を行なったかはわからないが、実際に手に取ってみて、素直に素晴らしいと思った。

これはいわばシチズンがシリーズエイトで表現しようとしているモダンさの一環であり、エントリーフライヤーGMTというだけではない存在に880 メカニカルを位置づけようとする“らしさ”だ。東京発、世界基準のフライヤーGMT。そのポジションを狙い撃たんとする、シチズン シリーズエイトの意図が感じられるように思う。

光の当たり方により、この新しい市松模様は、ベゼルのきらめきと調和する独特の陰影を見せる。

繰り返すが、880 メカニカルはシリーズエイトの完全新作である。リスタートから2年の沈黙を経て(そのあいだに周年モデルとしてカラーバリエーションがあったとしても)、ブランドとして次のステップに向かおうという気持ちが込められている。その答えがトレンドとなりつつあるGMTウォッチの入り口としての提案であり、現代人に必須となるディテールの結集だ。そのスペックに対しては(第2種の耐磁性能や防水性能を含め)信頼しているし、価格に対しても文句はない。あとは、そのなかに垣間見える個性を含めて気に入ったならば完璧だ。僕はひと足先に人生初のフライヤーGMTのポジションを880 メカニカルに託そうと思う。たとえこの先、僕が当初想定していたようなワントーンベゼルでフラットな文字盤のGMTウォッチがシリーズエイトから出たとしても、こんなにブランドの意図がありありと表現されたフライヤーGMTにはならないだろうから。

ティソはパワーマティック80ムーブメント(ETA2824-2の改良機だ)を搭載した初の35mm径PRXをリリースした。

ティソ PRX パワーマティック80にゴールドPVDケースとアイスブルーダイヤルの35mmモデルを追加。
約2カ月前、ティソはパワーマティック80ムーブメント(ETA2824-2の改良機だ)を搭載した初の35mm径PRXをリリースした。そして今回、ティソはふたつの新モデルを発表することで、ミドルサイズの自動巻きPRXコレクションを拡充した。ひとつはアイスブルーの文字盤で、もうひとつはゴールドPVD加工のケースとブレスレットを備えている。既存の40mm径モデルを知っている人にとって、これらのモデルは驚くべきものではないだろう(特にアイスブルーはすでに好評を博している)。しかし少し小さめのスポーツウォッチを好む人や、大型のPRXが手に馴染まない人にとってはうれしい追加オプションだ。

tissot prx powermatic 80 35mm
ティソが6月に35mmサイズのPRX パワーマティック 80を発表したとき、ダイヤルカラーはブルー、ブラック、グリーン、ホワイトのMOP(マザーオブパール)の4色だった。そして今回、ミドルサイズのPRXにファンの多いアイスブルーが加わった。ティソが40mm径のラインナップにアイスブルーの文字盤を追加してから数カ月が経過した今、ミドルサイズコレクションにも追加されたのは自然な流れである。それ以外は従来と変わらず、型押しのタピスリーダイヤルにスーパールミノバの針とインデックス、そして3時位置にはデイト窓が配されている。内部にはもちろん、ティソ独自の改良を加え、低振動でより長いパワーリザーブを実現したETA製ムーブメント、パワーマティック80が搭載されている

アイスブルーのPRX 35mmに加え、ティソはタピスリーダイヤルにもゴールドを組み合わせたゴールドPVD加工モデルも用意した。コーティングなしのSS製バージョンと同様、このゴールドPVDバージョンもケースとブレスレットの大部分がサテン仕上げとなっており、面取り部と細かい箇所にはポリッシュ仕上げが施されている。

PRX パワーマティックの35mmコレクションに加わったアイスブルーモデルは10万3400円(税込)、ゴールドバージョンは11万8800円(税込)である。

我々の考え
tissot prx powermatic 80 gold case
私はティソ PRXの35mm径モデルに大きな期待を寄せている。オリジナルの40mm径は私の手首には少し大きく、ラグからラグまでの寸法は実質的に一体型ブレスレットの動かない最初のリンクまでとなっており、約51mm(公式では39.5mmと記載されている)である。私はこの新しいミドルサイズをまだ試していないが、直径35mmでラグからラグまでの長さが45mmというのは魅力的だ。心配なのは厚みで、PRXの40mmに比べて厚くなってしまっている(前者は10.9mm、後者は11.3mm)。このためにケースのバランスが悪くなっている可能性もあるが、実際のところは詳細なHands-Onレビューを楽しみにしていて欲しい。いずれにせよ、1000ドルを大きく割り込むファンウォッチで0.4mm程度の差に文句を言うつもりはない。

この夏、シカゴを歩いていると、ティソのPRXをよく目にした(そして少なくとも、数人の時計関係ではない友人にもすすめた)。PRXの美点は、マニアにもノーマル層にも支持されやすいことだ。一体型のSS製スポーツウォッチは、いまだにこの界隈で特に人気のあるデザインだ。そしてPRXはおそらく70年代にインスパイアされた正統派のスポーツウォッチを手に入れるためのもっとも安価な方法であり、とても素晴らしいものなのだ。

ice blue prx powermatic 80 35mm
特にゴールドのバージョンは両親のいるシニアタウンで見かけるような雰囲気で、いかにもイカした祖父母を思わせる。その一方、アイスブルーの文字盤も35mmのSS製PRXの従来の選択肢を補う素晴らしい提案だ。これによりラインナップに(ホワイトのMOPと並ぶ)、明るい色のオプションがもう一色加わったことになる。多くの手首にフィットするミドルサイズのスポーツウォッチとしては、歓迎すべき追加要素だろう。

基本情報
ブランド: ティソ(Tissot)
モデル名: ティソ PRX
型番: T137.207.11.351.00(アイスブルー)、T137.207.33.021.00(ゴールドPVD)

直径: 35mm (公式の数値ではラグからラグまでが35mm、最初のブレスレットリンクまでの長さは45mm)
厚さ: 11.3mm
ケース素材: ステンレススティール(アイスブルー)、ゴールドPVD加工ステンレススティール(ゴールドPVD)
文字盤色: アイスブルーまたはゴールドの型押しタピスリーパターン
インデックス: アプライド
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: トリプルフォールディングクラスプを備えたステンレススティール製(またはPVDコーティング)

tissot powermatic 80 caliber
ムーブメント情報
キャリバー: パワーマティック80(ETA2824-2の改良機)
機能: 時・分・秒、デイト
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 80時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万1600振動/時
石数: 23
クロノメーター認定: なし
追加情報: ニヴァクロン製ヒゲゼンマイ

価格 & 発売時期
価格: 10万3400円(税込、アイスブルー)、11万8800円(税込、ゴールドPVD)

【業者比較】腕時計を売るならどこがいい?

腕時計を手放すとき、「どこで売れば一番高く買い取ってもらえるのか」「信頼できる業者はどこか」と悩む人は少なくありません。

腕時計の買取先には、大手チェーン店やブランド時計専門店、質屋、リサイクルショップなどさまざまな選択肢があります。どこを利用するかによって、買取価格はもちろん、安心感や利便性にも大きな違いが生まれます。そのため、自分の目的に合った業者を見極めて選ぶことが大切です。

大手買取チェーン
大手買取チェーンは、駅前や商業施設に店舗を構え、アクセスのよさがメリットです。全国展開しているため地域を問わず利用しやすく、接客やサービス体制も安定しています。

また、ブランドを問わず幅広い時計を取り扱っており、知名度の高さから安心感を得られる点も特徴です。査定システムが統一されているため、店舗ごとに大きな価格差が出にくいのも利点といえるでしょう。

一方で、時計以外の商品も幅広く扱っているため、高級時計に関しては専門性が十分とはいえない場合があります。その結果、市場相場より低めの査定額になるケースも少なくありません。特にロレックスやオメガなどの高級ブランドを手放す際は、専門店と比較しながら検討するのがおすすめです。

ブランド時計専門店
ロレックスやオメガ、パテックフィリップといった高級時計に特化した買取業者は、市場の動向に精通し、国内外の相場を常にチェックしているのが大きな強みです。市場価格を反映した適正な査定に加え、在庫状況や需要を踏まえた柔軟な価格提示が期待できます。

希少モデルやアンティーク品に対しても、専門知識と豊富なノウハウを活かして正しく評価してくれる点は大きな魅力でしょう。

ただし、取り扱いブランドが限定されている場合もあり、カジュアルブランドやファッション時計は買取対象外となったり、査定額が低めに設定されることもあります。高級時計を売却する人にとっては最適な選択肢ですが、ブランドやモデルによっては他の業者との比較も必要です。

質屋
昔ながらの方法として親しまれている質屋は、地域に根ざした営業を続けてきた信頼性の高さが大きな魅力です。その場で現金化できるため、急に資金が必要なときにも頼りになります。

長年の営業実績から安心感があり、親身に相談に応じてくれるケースも多いでしょう。さらに、「質預かり」という仕組みがあるため、売却を迷っている場合でも一時的に時計を預けるという選択が可能です。

一方で、再販ルートが限られていることから、買取価格は高級時計専門店に比べて低めになる傾向があります。特に海外で人気の高いブランドの場合、国内販売が中心となるため、査定額が相場より下がってしまうことも少なくありません。

リサイクルショップ
リサイクルショップは、時計だけでなくさまざまなアイテムをまとめて売却できるのが特徴です。引っ越しや片付けのタイミングで時計と不用品を一度に処分したいときには、非常に便利な選択肢といえます。

ノーブランド品や状態の悪い時計でも引き取ってもらえることが多く、他の業者で断られた時計が買取対象となるケースもあります。さらに、店舗数が多く気軽に利用しやすい点もメリットです。

ただし、時計査定の専門知識を持つスタッフが常にいるとは限らず、正確な評価が受けられない可能性があります。特にブランド時計に関しては価値を見極めてもらえず、相場よりもかなり低い価格での買取になることも少なくありません。

【方法比較】腕時計を売るならどこがいい?
腕時計の売却方法には、店頭買取・宅配買取・出張買取・下取り・個人売買など、いくつもの選択肢があります。それぞれ利点と注意点が異なるため、自分の状況や目的に合った方法を選ぶことが大切です。

店頭買取
店頭買取は、店舗に時計を持ち込み、その場で査定・買取をしてもらう最も一般的な方法です。査定員と直接やり取りできるため、査定内容の説明を詳しく聞けるうえ、疑問点もすぐに解消できます。

即日で現金化でき、査定から入金までがスピーディーに完了するのも大きな魅力です。時計の状態を実際に確認してもらえるので、適正な査定額を得やすく、安心感も高まります。

ただし、近隣に適切な買取店がなければ利用しにくいというデメリットがあります。さらに、複数の業者を比較したい場合は、各店舗を回る必要があり、時間と手間がかかる点も考慮が必要です。

宅配買取
宅配買取は、時計を梱包して発送し、業者に査定してもらう方法です。地方に住んでいても全国の買取店を利用でき、複数業者にまとめて査定を依頼しやすいのが大きなメリットです。

自宅から手続きが完結するため移動の手間がなく、忙しい人にも向いています。さらに、多くの業者が無料の宅配キットを用意しているので、梱包材を自分で準備する必要もありません。

一方で、査定から入金まで数日かかることがあるため、すぐに現金化したい場合には不向きかもしれません。加えて、配送中の紛失リスクや、実物を見ないまま業者を選ぶ必要がある点には注意が必要です。

出張買取
出張買取は、査定員が自宅や指定の場所まで訪問してくれる方法です。重い時計や複数本をまとめて売りたいときに便利で、店舗まで持ち込む手間がかかりません。

対面で査定を受けられるため安心感があり、その場で査定内容の説明を聞けるのも利点です。業者によっては即日現金化に対応しているところもあり、利便性と安心感を兼ね備えた方法といえるでしょう。

一方で、対応エリアは都市部が中心となることが多く、地方では利用できない場合があります。さらに、出張費が査定額に影響するケースや、自宅に業者を招き入れる必要がある点は考慮しておくべきです。

下取り
時計販売店で新しい時計を購入する際に、現在所有している時計を下取りに出す方法もあります。買い替えの手続きが一度で完結し、購入代金から下取り額を差し引いてもらえるため、非常にスムーズに進められます。

また、販売店との継続的な関係を築ける点もメリットで、アフターサービスや将来の買い替え時に優遇を受けられる可能性があります。

ただし、下取り額は単独で売却した場合の買取価格より低くなるケースが多いのが現実です。時計の価値を少しでも高く活かしたいなら、まずは買取専門店で査定を受け、下取りと比較して判断するのが賢明でしょう。

個人売買(フリマアプリ・オークション)
個人売買は、メルカリやヤフオクといったプラットフォームを利用し、個人間で直接取引を行う方法です。中間業者を通さないため、タイミングによっては買取業者より高値で売れることもあります。

自分で価格を設定できるほか、商品説明や写真を工夫すれば、時計の魅力をしっかり伝えられる点もメリットです。売却のタイミングを自由にコントロールできるのも大きな利点といえるでしょう。

一方で、偽物を疑われるリスクや購入者とのトラブル、発送作業など、手間や責任が多く発生します。さらに、販売手数料や送料を差し引くと、実際の手取り額が期待より少なくなるケースもあります。時計に関する知識や取引経験が十分でない場合は、リスクの高い方法と考えておくべきです。

ブランド時計を売却するなら日本時計堂がおすすめ

ブランド時計の売却を検討している場合は、日本時計堂の利用を検討してみるとよいでしょう。日本時計堂は、豊富な知識・経験を持つ専属のコンシェルジュ(担当者)が高価買取をサポートするサービスです。

日本国内だけでなく海外のバイヤーを含む複数の業者が競い合い、一番高額な業者を紹介します。また、コンシェルジュが適正な相場をもとに、査定プロセスや選ばれた業者との価格交渉を代行するため、利用者は安心してサービスを利用できます。

やり取りはLINEだけで完結するため、時間や場所を問わず買取依頼が可能です。忙しい人や店舗まで足を運ぶのが難しい人にとって便利なサービスといえます。また、「いつ売るべきか」という最適な売却タイミングもアドバイスを受けられるため、相場の変動を考慮した売却時期の判断もサポートしてもらえます。

最短即日で査定結果の通知があり、売却決定後は迅速な入金対応も行っています。豊富な買取実績を持つサービスのため、腕時計の売却を検討している人は気軽に問い合わせしてみるとよいでしょう。

腕時計の買取業者や売却方法を選ぶ際の判断基準
腕時計を売却する際に失敗しないためには、「どこで売るか」を冷静に見極めることが欠かせません。ここでは、買取業者や売却方法を選ぶ際に押さえておきたいチェックポイントを整理して紹介します。

買取価格の妥当性
判断基準の中でも特に重要なのが、提示された買取価格が相場と比べて適正かどうかです。同じブランドやモデルでも、業者によって数万円の差が出ることは珍しくありません。

複数の業者に査定を依頼して比較すれば、おおよその相場感を掴めるでしょう。特に高級ブランドの腕時計は、大手チェーンよりも専門店のほうが高値を提示するケースが多いため、必ず専門店での査定も受けておくと安心です。

ただし、相場とかけ離れた高額査定を提示する業者には注意が必要です。契約直前に減額されるリスクもあるため、査定額の根拠をしっかり説明してもらえるかを確認することが大切です。

信頼性・安心感
高額な商品である時計を扱う以上、業者の信頼性は欠かせない判断基準です。まず確認すべきは、古物営業許可を正式に取得しているかどうかです。この許可を持たずに中古品を売買することは法律で禁止されています。

加えて、長年の営業実績や利用者の口コミ・評判も参考になります。特に高級時計を売却する際には、すり替え防止や査定過程の透明性が確保されているかどうかをしっかり確認することが重要です。

店舗を構えている業者なら、実際に足を運んで雰囲気を確かめてみるのも有効です。清潔感のある環境で、スタッフが誠実かつ丁寧に対応してくれる業者を選べば、安心して取引ができるでしょう。

ブレゲ マニュファクチュールへの道:ロリアンの工房で見た老舗の進化。

ブレゲの顔とも言えるギヨシェ彫りの全貌を見て、修復部門でマリー・アントワネットに出会えたことは、このメゾンの工場ならではの特筆すべきものだ。
ブレゲは言わずとしれた超名門マニュファクチュールであり、1775年の創業以来200を超える特許を取得して、時計産業の基礎となる技術を文字通り作り上げた企業だ。今回、2箇所ある重要な工場のうち、本拠地とも言えるロリアン(スイス・ジュウ渓谷)への訪問が叶った。コロナ前はその門戸が開くことは稀で、なおかつ撮影などは不可能だったというから、今回僕は入手したばかりのライカ Qを手に胸を踊らせて現地に向かった。
なお、工場での取材ののち、リオネル・ア・マルカCEOにメールインタビューをする機会にも恵まれたため、今回は現地で感じた疑問にCEO自らお答えいただいた内容も交えてお届けする。
エントランスに展示された、かつてのローズエンジン製ギヨシェマシン。触れてもよいとのことだったが、後光が指しているようで遠慮する自分がいた。
すべての始まりはニコラス・ハイエック氏の情熱とメゾンの精神の融合から
まずはロリアンのマニュファクチュールの成り立ちからお伝えする。ここはかつて、ヌーヴェルレマニアとして知られた工場であり、1999年にスウォッチ・グループの傘下に入ることになる。当時、ブレゲのCEOを務めていたニコラス・G・ハイエックが陣頭指揮を執り、2004年までにブレゲのマニュファクチュール化を果たした。2006年、2013年にそれぞれ増床を行い、レマニア時代からの資産である工作機械によるムーブメントのパーツ製造、アッセンブリ、エナメルを含む文字盤製造、ギヨシェ加工、コンプリケーションの開発・製造などを一手に引き受けている。
ニコラス・G・ハイエックの名が刻まれたレリーフ。la 1ere pierre a ete poséeとは、最初の石が置かれたという意味で、すなわち2001年からスタートしたマニュファクチュール化のはじめの一歩を記念したもの。
ロリアンのマニュファクチュールは他の時計ブランドと比べて、パーツを製造する工程が多彩だ。昨今は多軸CNCマシンを用いてパーツを削り出すやり方が増えているが、ムーブメントメーカーだった頃の面目躍如というところで、プレス加工機による製造も多用されているようだった。様々なパーツを製造するための、素材となる金属をひとまとめにしたエリアは、ラ・ジュー・ペレ社などムーブメントメーカーで見かける光景だ。僕がお邪魔した際は、熟練工が鼻歌を歌いながら次々とプレスをかけてパーツを打ち抜いていた。おそらく彼はレマニア時代からの職人なのだろう。躊躇なくリズミカルに行うその様は、少量生産の高級ブランドであるブレゲのイメージとは少しギャップがあって、親しみやすさを感じた。
圧巻のギヨシェプロダクションは業界最高峰
さて僕がこのマニュファクチュールで最も心奪われたセクションにやってきた。エントランスホールで見たローズエンジン製のギヨシェマシンを改良したようなものが、ところ狭しと並んでいる。僕がこれまでに見たなかで明らかに最も多い数のギヨシェマシンがそこにはあった。ブレゲのシグネチャーは全部で7つあるが、見た目的にも印象深いのがギヨシェだろう。エナメル文字盤も捨てがたいが、多彩なギヨシェパターンを操り、近しいデザインコードを持つクラシックに個性を与えていくという意味で、ブレゲを代表する特徴だと思う。
しかしながら、ア・マルカCEOによれば、このマニュファクチュールが買収された1999年ごろは、ギヨシェ加工自体はもはや下火だったという。
「当時、ニコラス・G・ハイエックは、ブランドのDNAであり時計製造のDNAでもあるギヨシェという遺産を守るために投資をしようと考えました。ギヨシェマシンの修復に投資する一方で、ギヨシェ彫りの技術を学べるようなスクールは存在していなかったため、社内で情熱的な職人を育成することにも力を入れていました。今日、ギヨシェ彫りが再び流行の兆しを見せているところだが、我々は時計業界においてギヨシェ彫りに特化したセクションとして最大級の規模を備えています」
自作のギヨシェマシンは現在も増加中
なお、現在何台のギヨシェマシーンがあるか尋ねたところ、「現在も増え続けているため正確な数はわからない」との回答だった。ブレゲでは、世界中から数十年前のローズエンジン旋盤を発掘し、修復する部門があるという。
これだけの数の工作機械を稼働させるには、相応の数の職人が必要になる。その社内教育は非常に地道なもので、ブレゲのシグネチャーをまずマスターしてから、より複雑なエングレービングのトレーニングへと移る。時間にしておよそ6ヵ月が必要だというから、ブランドにとっても職人にとっても根気がいる。ただ、ブレゲでは社内でのジョブローテションも盛んに行われているということで、ひとつのセクションの仕事だけで職人人生を終えるということはあまりなさそうだ。
「ブレゲの時計には、装飾において芸術や工芸のような域の施すことも多い。これは、多くの人を魅了してやまないものなのです」
基本的なギヨシェ彫りは、ベースとなる模様が施された円盤を機械がなぞり、18Kゴールド文字盤へと転写していく。職人は一定の力で彫りの深さを揃えていく必要があるため、一度掘り出すと1枚を仕上げきるまでは作業を続けるそうだ。
仕上がったギヨシェ彫りのサンプル。非常に精緻な模様が施されている。1枚の文字盤に対して均一な力を保った職人の技量がうかがえる。
ニコラス・G・ハイエックは、ブランドのDNAであり、時計製造のDNAでもあるこの遺産を守るために投資をしようと考えました
熟練職人の手作業による面取りでさらに輝くギヨシェ
ブレゲの文字盤は比較的シンプルなものでもギヨシェのパターンが複数用いられ、別の仕上げとの境に丁寧な面取りが施される。取材当日は実演も拝見したが、この仕上げの精度がとてつもなかった。職人は、金属や木、プラスチックなど様々な素材のやすり(3Mと書かれたものも発見!)で作業を行う。下の画像は、まさにギヨシェが終わるエッジ部分に面取りをしている様子だが、顕微鏡を覗き込んでやすりの角度を45°に保ちながら文字盤を磨いていく。やすりが行き来したあとには、瞬く間にポリッシュされた均質な面が現れるのだが、僕も体験したことでこれが途方もない技術の産物なのだと思い知らされた。
当然ながら、磨く対象は金属なので中途半端な力ではポリッシュが入らずに、ただ単に傷をつけただけのような状態になってしまう。また、角度がブレると光を反射する面取り面も歪む。顕微鏡で見ていると自分の手作業のぎこちなさがありありと見え、面取りなどとお世辞にも言えない仕上がりが嫌になるのだが、当然ながらそこから修正できるような技術はない。改めて高級時計製造の仕上げというのは、職人を育てる環境と時間が伴って初めて実現する贅沢なものなのだということを噛み締めた。

グランドセイコー 最新のムーヴメントを搭載した限定モデル”グランドセイコー スプリングドライブ U.F.A.”が登場。

グランドセイコー エボリューション9 コレクション
スプリングドライブ U.F.A. 限定モデル
文字盤のデザインは、信州・霧ヶ峰高原で冬に広がる樹氷をモチーフに、繊細な型打ち模様とバイオレットのグラデーションによって、森の夜明けから目覚める自然の幻想的な姿を表現している。

ケースは、37mmサイズで、素材には耐食性で世界最高水準を誇る”エバーブリリアントスチール”を採用。ヘアライン仕上げの白い輝きが際立ち、熟練の研磨師によるザラツ研磨でゆがみのない鏡面を実現。

また、風防にはボックス型サファイアガラスを使用し、内面には無反射コーティングを施すことで高い視認性を確保している。

本モデルには、新しく開発されたグランドセイコー専用設計のスプリングドライブムーヴメント、キャリバー”9RB2”を備える。

グランドセイコー スプリングドライブ U.F.A. 限定モデル
■Ref.SLGB005。エバーブリリアントスチール(37mm径)。10気圧防水。自動巻き(Cal.9RB2)。限定1300本(うち国内700本)146万3000円

ぜんまいを動力としながらICと水晶振動子で精度を制御する独自機構”スプリングドライブ”を進化させたキャリバーだ。年差わずか±20秒という世界最高レベルの精度を誇り、約72時間のパワーリザーブを備える。

ゼンマイを巻き上げる回転錘には”SPRING DRIVE ULTRA FINE ACCURACY”の刻印を施し、極限の精度を実現した証を刻んでいる点も特徴だ。

なお、販売価格は146万3000円。世界限定1300本(うち国内700本)となる。