セイコー「アルピニスト」をこの上なく丁寧に解説!

「セイコー プロスペックス」のクラシカルスポーツウォッチシリーズ
 アルピニストは、セイコーが登山やトレッキングなどのアクティビティ向けに展開する「セイコー プロスペックス」ブランドの一翼を担うシリーズで、クラシカルな外観を保ちながら高い実用性を備えている。

 シリーズ誕生のルーツとなったのは、1959年発売の「ローレル アルピニスト」だ。当時、日本初の本格スポーツウォッチとして誕生し、過酷な環境下での精度維持と視認性確保を追求した結果、登山家や自然愛好家たちの支持を得た。

 この伝統は現行モデルにも受け継がれ、内転リングによる簡易方位計や高水準の防水性能、ステンレススティール製ケースなど、フィールドでの実用性に優れた機能とデザインを融合。さらにメカニカルやクォーツなど多彩な選択肢を用意することで、アウトドアアクティビティの初心者から熟練愛好家まで、多様なユーザー層に対応している。

1959年、初代「ローレル アルピニスト」の登場
セイコー アルピニスト
現在のアルピニストの源流となったのが、1959年に発売された「ローレル アルピニスト」である。1960年代のレジャーブームを目前に登山やスキーの人気が出始めていた頃、スポーツシーンにフィットする時計として誕生。砂やほこりの侵入を防ぐために機密性の高いスクリューバックを採用し、レザー製のウォッチパッドは汗から時計を守る役割を果たした。
 1959年に登場した「ローレル アルピニスト」は、セイコーのスポーツウォッチ開発における礎となるモデルである。

 当時、日本では登山やハイキングへの関心が高まり、時計にも高い耐久性や精度が求められた。ローレル アルピニストは、頑丈なケース、見やすい文字盤、堅実なムーブメントを備え、プロ・アマを問わず多くの登山家が信頼する装備品となった。

 その成功は、後続シリーズの方向性を定め、「アルピニスト」特有の性能重視の設計思想を確立した。

 これにより、セイコー時計コピー Nランク 代金引換を激安はアウトドアウォッチの分野で存在感を高め、現在まで続く実用的かつクラシカルなコンセプトの源流を形作ったと言えるだろう。

セイコー「アルピニスト」の魅力と特徴
「アルピニスト」の魅力はデザインや機能性にある。過酷な自然環境で発揮される耐久性と日常使いにも適応する汎用性、そしてクラシカルな佇まいの融合にある。この点について、以下でさらに掘り下げて見ていこう。

デザインに込められた機能美
セイコー アルピニスト
アルピニストのラインナップに共通しているのが登山やトレッキングで使いやすいデザイン。時刻の判読性を高める針とインデックスに加え、ケースも装着感を高めるフォルムを採用している。
 アルピニストは、視認性と堅牢性を重視した設計が大きな特徴である。たとえば、太くコントラストのはっきりした針とインデックスは、薄暗い森林や曇天下でも瞬時に時刻を読み取れるよう考慮されている。

 また、内転リングを用いた簡易方位計は、登山路での方向確認に役立つ。

 ケースフォルムは装着感を高め、また素材も耐久性を確保するべく、ステンレススティールやサファイアガラスなどを使用している。

 結果、デザインは単なる装飾ではなく、使用者が自然環境で直面する課題に応えつつも、着用することの喜びが感じられる外観を生み出している。これが、アルピニストが高く評価される理由である。

アウトドアに最適な耐久性と防水性
アルピニストは、山岳環境やアウトドアアクティビティを想定し、優れた耐久性と防水性能を備えている。いずれも20気圧の防水性能を備えているので、雨天時はもちろん、川を渡ったり、雪山に登ったりというような状況でも安心して使用可能だ。

 素材には腐食や摩耗に強いステンレススティールを採用し、ケース内部のムーブメントを衝撃や湿気から守る。

 たとえば、長時間の登山で振動や汗、温度差が生じても、時計は精度を損なわず動作を続ける。

 この堅牢性と耐候性は、アウトドアの専門家や本格的な山岳ガイドにも有用であり、また都市生活においても日常的な衝撃や水濡れ対策として価値が高い。

搭載された機械式ムーブメントの技術力
 現行のアルピニストには、セイコーが培った機械式ムーブメント技術が注ぎ込まれている。

 従来モデルに採用されているCal.6R35は約70時間のロングパワーリザーブを確保し、週末を挟んでも止まらず、実用性が高い。

 さらに近年、Cal.6R54を搭載するモデルでは、約72時間パワーリザーブとGMT機能を追加している。

 異なるタイムゾーンの把握が求められるワールドワイドな活動やビジネスにも対応可能だ。

 こうした精密なムーブメントはセイコー独自の品質管理下で生産され、高い信頼性を維持。ユーザーは長期にわたって安定した計時性能を享受できる。

「アルピニスト」の現行3モデルを紹介
 現行の「アルピニスト」シリーズは、それぞれのモデルが特定のニーズに応える設計となっている。以下では主要な3モデルを詳しく紹介する。

アウトドアシーンで輝くRef.SBDC091
セイコー アルピニスト SBDC091
セイコー プロスペックス「アルピニスト」Ref.SBDC091
自動巻き(Cal.6R35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ13.2mm)。日常生活用強化防水(20気圧)。9万7900円(税込み)。
 Ref.SBDC091は、グリーンダイアルとゴールドカラーの針が特色で、クラシカルな雰囲気を醸し出しながら、内転リングによる簡易方位計や20気圧防水などの実用性も兼ね備えている。

 Cal.6R35搭載で約70時間のパワーリザーブを誇り、週末を挟んでも止まらない安心感がある。

 直径39.5mmのケースは手首になじみやすく、登山用ウェアからカジュアルなスタイリングまで幅広い装いにマッチ。また、野外キャンプや軽登山で簡易的な方位確認が行える点もユーザーにとって大きな利点である。

 Ref.SBDC091は、機能とデザインを両立するバランスの取れた一品だ。

機能的なRef.SBDC087
セイコー アルピニスト SBDC087
セイコー プロスペックス「アルピニスト」Ref.SBDC087
自動巻き(Cal.6R35)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ13.2mm)。日常生活用強化防水(20気圧)。10万100円(税込み)。
 Ref.SBDC087は、ブラック文字盤とステンレススティール製ケースの組み合わせがシンプルでどんなファッションにも馴染む、高い汎用性が特徴だ。

 視認性の高いインデックスと針は、曇天や木陰でも時間確認がしやすい点に加えて、内転リングによる方位計機能はハイキングや野外スポーツでの簡易ナビゲーションに有効である。

 Cal.6R35の搭載により約70時間パワーリザーブを確保し、日常の使用でも安定した動作を約束。直径39.5mmのケースサイズと20気圧防水性能も相まって、都市生活から自然散策まで多彩なシチュエーションで役立つユーティリティーモデルとして人気を博している。

特別仕様が際立つRef.SBEJ005
セイコー アルピニスト SBEJ005
セイコー プロスペックス「アルピニスト」Ref.SBEJ005
自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS(直径39.5mm、厚さ13.6mm)。日常生活用強化防水(20気圧)。14万9600円(税込み)。
 SBEJ005は、アルピニストシリーズの中でもプレミアム感が際立つ特別モデルである。

 深みのあるグリーンの文字盤にゴールドの針とインデックスを組み合わせ、クラシカルで洗練されたデザインを実現している。

 先端が赤い24時針やヘアライン仕上げのベゼルに配された24時間表記を特徴とし、高い視認性と判読性を持つ。Cal.6R54を搭載し、約72時間パワーリザーブとGMT機能を実装するなど実用性を強化している点も特筆だ。

 サファイアガラスや上質なレザーストラップはクラシカルな風合いと高級感を演出し、立体的な植字インデックスが文字盤に奥行きを生む。こうした細部まで配慮した仕様により、SBEJ005は精密さと格式を併せ持つ特別な一本として位置付けられている。

「アルピニスト」の歴史に見るセイコーの哲学
「アルピニスト」は、セイコーが長年培った技術力と、ユーザーのニーズに真摯に応えた姿勢の集大成とも呼べるシリーズである。

 1959年の初代モデル誕生以来、自然環境下での信頼性、視認性、耐久性が求められ、それに応える工夫が積み重ねられた。結果として、クラシカルなデザインを踏襲しつつ、機能的価値を高める独自の進化が続いてきた。

 この哲学は、アウトドア専門家だけでなく、日常生活で実用的かつ個性を表現したい人々にも響く。アルピニストは、セイコーが革新と品質を両立し続けるブランドポリシーを示す優れたタイムピースと言える。

パテック フィリップ アクアノート・トラベルタイム 5164G ホワイトゴールドで復活

パテック フィリップは、ファンに人気のアクアノート・トラベルタイムの新バージョンを発表し、Watches & Wondersの幕を切った。今回はホワイトゴールドモデルだ。文字盤はブルーグレーでありストラップもそれに合わせたものになっているので、人々が期待していたカーキグリーンではないかもしれないが、現在のカタログで最も長く愛されているパテックのリファレンスのひとつとしてはおもしろいバリエーションである。

Aquanaut Travel Time White Gold
新しい5164Gは40.8mm径×10.2mm厚のケースに、パテックフィリップコピー 代金引換優良サイト5164Rや旧モデルの5164A(残念ながら生産終了)に搭載されたのと同じ、Cal.26-330 S C FUSムーブメントを搭載している。同キャリバーはシースルーバックから見ることができる。オパラインブルーグレーにエンボス加工を施したアクアノートパターンダイヤルは、本日発表された5980Gと同じカラーだが、こちらは同じブルーの素晴らしいラバーストラップにディプロワイヤントクラスプが付属している。価格は5164Rと同様、本日の超特価である998万円(税込)となる。

我々の考え
国王は崩御した。新国王万歳。私の友人たちは、Ref.5164A(アクアノート・トラベルタイムのスティールバージョン)が私のお気に入りの時計だったことを知っている。第2時間帯を追跡するためのそのデザインは、市場で最もエレガントな解決策のひとつである。私がロレックス GMTマスター IIの熱狂的なファンであることから言っても間違いない。

Aquanaut Travel Time
パテックが最終的に何かでそのギャップを埋めるとは確信していたが、来年まで待たなければならないと思っていた。また、私は5164が5811のような扱いを受けてWGバージョンにならないことを願ってもいた。結果は、パテックがSSから脱却したことで、ブランドにとって諸刃の剣となったハイプが市場にやってきた。今週のWatches & Wondersで実物を見るのが非常に楽しみだが、スポーティな時計はスポーティなライフスタイルに合った素材のままであるべきだと思う自分もいる。ダイバーズウォッチではないが、アクアノート・トラベルタイムは究極の“カジュアルフレックス”トラベルウォッチとなった。WG製で、SSモデルよりも約2万ドル(日本円で約300万円)高い。誰が冗談を言っているのか…理屈はともかく私はこの時計のファンなのだ。

基本情報
ブランド: パテック フィリップ(Patek Philippe)
モデル名: アクアノート・トラベルタイム(Aquanaut Travel Time)
型番: 5164G

直径: 40.8mm
厚さ: 10.2mm
ケース素材: ホワイトゴールド
文字盤: オパラインブルーグレー、アクアノート柄エンボス加工
インデックス: アプライド
夜光: あり、ホワイト夜光
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: コンポジット素材のブルーグレーラバーストラップ、 WG製折り畳み式バックル(特許取得)

Aquanaut Travel Time White Gold
ムーブメント情報
キャリバー: 26-330 S C FUS
機能: 時・分・センターセコンド、2タイムゾーン(ローカルタイムとホームタイムの表示)、ローカルタイムとホームタイムのデイ/ナイト表示(開口部)、日付とローカルタイムの連動(針)、スイープセコンド
直径: 31mm
厚さ: 4.82mm
パワーリザーブ: 約35~45時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 29

価格 & 発売時期
価格: 998万円(税込)
発売時期: すぐに
限定: なし

時計界の主役を張るロレックス デイトナのオーナー視点のレビューをお届けしよう

こういうのが欲しかったんでしょう? できましたよ(編注:70年代の米国トヨタ カローラのCMより)。ロレックス デイトナ “ル・マン” Ref.126529LNについて、オーナーである私からお届けしよう。この記事を執筆しながら、本メディアで私が実際に所有している時計を個人的にレビューしたのはいつ以来か思い出せないでいる。久しぶりなだけに、ちょっぴり楽しんでいる。そして、もしかしたら本記事がきっかけで“A Week On (An Owner’s) Wrist(オーナーの手首で1週間)”にシリーズ名が変わるかもしれない。それはとにかく、さっそく本題に入ろう。

先日、我々のチームの誰かが、ロレックススーパーコピー 代引き新しい時計で純粋に興奮したのはいつ以来かと尋ねてきた(HODINKEE限定モデルは除く)。 最近の記憶では、オーデマ ピゲのRef.15202 BC、パテック フィリップのRef.5270P、A.ランゲ&ゾーネの1815ラトラパンテ、カルティエのノルマルだろうか。それぞれ審美面、系譜、技術面など、あらゆる面で私に語りかけてくる、まさにキラーウォッチの数々だ。

Rolex Daytona on the wrist
ル・マンのような時計は、筆者にとってそうそう巡ってくるものではない。

 しかし、最近の歴史のなかで、私に邪悪な考えを抱かせた2本の時計がある。私のような時計沼にハマった人なら、どんなタイプかご存じだろう。“この時計のためなら何でもする。何でもだ”と言わしめるような時計だ。そのうちのひとつは、こんな感じの小さな貴金属製の時刻表示のみの時計だ。もうひとつは? ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNである。

ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNとは何か?
 世の中で起こった重要な出来事は、忘れ得ぬ爪痕を残すという。この時計のニュースが流れた瞬間、私はどこにいたかをよく覚えている。美しい初夏の土曜日、私はここで友人たちとクレー射撃をしていた。日付まではっきりと覚えている。なぜなら、この時計はほかのロレックスの新作のようにWatches&Wonders 2023で発表されたわけではないからだ。いや、ル・マン第100回大会でひっそり(かどうかは分からないが)発表されたのだ。

Rolex Daytona with a Paul Newman dial
「これがロレックスの新しいクロノグラフだ。その名も “ル・マン”」 1963年頃、そして2023年。

Photo Report: 世界最高峰の耐久レース、ル・マン 24時間レース 第100回大会の現場から

HODINKEEのフォトグラファー、ジョナサン・マクウォーターは、2023年夏に開催されたル・マン100回記念大会に実際に参加した。この時計がお披露目された歴史的なイベントの舞台裏をこの記事で見ることができる。

 そして、これがこの時計の本質、世界でもっとも重要な耐久レースであるル・マンの1世紀にわたる軌跡を表している。そして、実はちょっとした数字遊びが隠されている。昨年の2023年は100周年にあたり、上の画像のRef.6239が発表された1963年は40周年だった。そのためか、ロレックスは現在我々がデイトナとして認識している時計を当初ル・マンと名付けていた(上の私の蔵書内の元の広告を参照してほしい)。しかし、見方によってはル・マンはレースとしてより歴史が長いといえ、ロレックスは何世代にもわたってその一翼を担ってきた。だから、実はデイトナでありながらル・マンでもあるこのクロノグラフが、100回目のレースにあたりお披露目されるのは理にかなっているのだ。

 では、この時計はいったい何なのだろうか? 基本的には最新世代のデイトナ(Watches&Wonders 2023で初公開されたメタリックな質感のベゼルリングで簡単に識別できる)だが、ある人は“エキゾチック”ダイヤルと呼ぶ、平たく言えば“ポール・ニューマン”ダイヤルを備えているモデルということだ。さらに、2023年新作のプラチナモデルと同じオープンケースバック仕様、そして最も重要なのは、12時間積算計の代わりに24時間積算計を備えたクロノグラフという、まったく異なるムーブメント(Cal.4132)を搭載していることだろう。シンプルだが、重要な意味を持つ仕様変更であり、ロレックスが決してその地位に安住することはないことの証明でもある。

Close up on the dial
ル・マンに対する唯一の批判は、入手不可能であること以上に、ダイヤルのみならずベゼルの100のマーカにまでレッドの差し色が使われていることだ。何ヵ月も着用していると、そのことはすっかり忘れてしまう。

 この時計について語りたいことは山ほどある。だからこそ20分延々と続く動画が出来上がったわけだ。しかし、いくつかの重要なポイントを簡単に説明しよう。まずオープンケースバックは、私が持つほかのデイトナより少し厚く感じる。しかし、私が“感じる”と書いたのは、実際に時計の厚さを測ってみると、それほど厚くなかったからだ。つまり“サファイアバック=厚みが嵩む”というのは少し的外れであり、私の感覚はあくまで感覚であって、事実ではない。

Rolex Caliber 4132
Cal.4132は、“オートオルロジュリー(超高級時計)”と呼ぶような水準ではないが、実に素晴らしく見える!

 ケースバックとゴールド製ローターについて特筆すべきは、このムーブメントが実に素敵に見えるということだ。パテックやランゲの手巻きクロノグラフムーブメントと仕上げの点で比肩するだろうか? 確かに及ばないが、それが目的ではないし、価格帯も異なる。ロレックスのムーブメントが工業品のように見えるのは、実際そのように製造されているからだという思い込みがあろう。しかし10年近く前にロレックスの社内に潜入したときに紹介したように、これらのムーブメントがどれだけ手作業の工程が多いか知るとショックを受けるだろう。そしてCal.4132は、ここでご覧いただけるように、実に見栄えがする。地板には深いジュネーブストライプが施され、イエローゴールド製ローターも精巧に仕上げられている。

 ムーブメントについて触れておくと、4132は新しいキャリバー番号で、ほかのデイトナに搭載されているCal.4131とは異なり、12時間ではなく24時間積算機能を持つ。ロレックスによると、これを実現するために7つの部品を追加する必要があったという。つまり、それほど多くはないのだが、いくつかの理由からこの逸脱は大きい。ロレックスのムーブメントが刷新されることは滅多にあることではないし、必要に駆られたものでもなかった。確かに、積算計を12時間から24時間に増量させるのに、たった7つの部品しか使わなかったが、それは称賛されるべきことである。ロレックスは効率性を追求する社風があり、丸1日分の経過時間をカウントする唯一の機械式クロノグラフではないにしても(ただし、この事実については、どなたかに検証いただきたい)、そのひとつを作り上げることができるのは、ロレックスのムーブメントの高い品質と創意工夫があってこそ、なのだ。

 24時間積算計なんてたいしたものではないと思われるかもしれないし、12時間積算計と人間の頭脳を組み合わせればちゃんとした24時間積算計になるから誰も作ったことがないと主張する人も多いだろう。しかし煎じ詰めれば、高級時計製造のほとんどすべてに同じことが言えてしまう。そしてロレックスは、ル・マン24時間耐久レースとの本格的な連携という真の目的を持って、それを成し遂げたのである。また、24時間積算計を時計製造への些細な貢献と見なすのは簡単だが、クロノグラフを作るのがいかに難しいかを考えると、少し考えが変わるかもしれない。例えば、パテック フィリップのカタログを見るといい。アワーレジスター(時積算計)を備えたクロノグラフは見当たらない。Ref.5172/5270は、間違いなく世界で最も優れたクロノグラフのひとつだが、計測できるのは30分までである。パテックのより実用的なキャリバーであるRef.5905でも60分積算計を搭載するのみである。ダトグラフは? 同じく30分だ。これでお分かりいただけたのではないだろうか?

 また、私はバーゼルワールド2018で、多くの人がレインボーベゼルは時計製造における宝石セッティングへの些細な貢献だと言っていたことを思い出している(カーラは違った、彼女は逆の評価を下していた)、そして今の世界を見て欲しい。私の言葉を覚えておいて欲しい。我々は今後数年のうちに、さらにいくつかの24時間積算クロノグラフを目にすることになるだろう。しかし、ほかのレインボー同様、このデイトナのオリジナル性に匹敵するものはないだろう。

24時間積算計の12のすぐ下を見ると、ダイヤルがレンダリング画像で見るようなピュアでリッチなブラックではないメタリックグレーであることがわかる。

 もうひとつ注目すべきは、このダイヤルがステンレススティール製デイトナに見られるようなリッチで艶感のあるブラックではなく、メタリックグレーに近いという点だ。まったく予想していなかった光沢感がある。よし悪しではなく、手首につけたときにしか見られないディテールであり、ウェブ上の画像ではあまりわからない。また、ダイヤルについては、ポール・ニューマンスタイルが採用されており、各積算計のハッシュマークの端の小さな四角いマーカーの意匠は、誰も予想していなかったのではないだろうか。

Reference Points: ロレックス ポール・ニューマン デイトナの全て

オリジナルの “ポール・ニューマン デイトナ “について知りたい? 2014年にさかのぼるこのReference Pointsの動画をご覧いただきたい。

 さて、“ポール・ニューマン”スタイルのダイヤルのロレックスコレクターの伝説における立ち位置を知ることは重要だ。まず、誰もが言うように、これらの特別なダイヤルは曲者が多いのだが、紛れもなくクールな要素が潜んでいる。時計収集が主流になってから何年も経った今日でさえ、非エキゾチックダイヤルの通常のデイトナよりもかなりのプレミアムがつくほどだ。特に理解し難いことは、どの時計がどのダイヤルと組み合わされて製造されたかを知る術がないことだ。しかしロレックスの世界では、価値の多くはダイヤルに左右され、出自はほとんど問題にされない。世界で最も高価なデイトナは、ほぼ間違いなくこのスタイルのダイヤルを持つものであり、あの1800万ドルのポール・ニューマン デイトナに限った話ではないのだ。だからロレックスがついにこのスタイルのダイヤルを備えた現代版のコスモグラフを発表したとき、世界が特に注目するのは当然といえよう。もちろん、この時計はSS製ではなく18Kホワイトゴールド製だ。これは、(ロレックスの時計が依然として享受している著しい需要に対して)すでに困難に陥っている供給問題を悪化させないように、おそらく価格帯を入手可能な範囲から大幅に引き上げることを期待してのことだろう。

デイトナ ル・マンはデイトナ愛好家のコレクションのどこに位置するのか?

ここでの違いは微妙だが、重要である。

私がデイトナを愛していることは隠すつもりのない、公然の事実だ。先代のSS製(Ref.116500LN)のホワイト/ブラックダイヤルの両方と、オイスターフレックスのWG仕様を含め、何本か所有している。ブラックダイヤルのSS仕様は現在、ニューヨーク州ロチェスターに住む母のもとで過ごしている(彼女の手首からこの時計を買い取ろうとした地元のスーパーマーケットの変人たちに拍手を!)。しかし、この時計は長いあいだ、私のコレクションの定番だった…ル・マンがそれを変えてしまうのだろうか? もちろん、そんなことはない。しかし、そもそも現代のデイトナの何がそんなに素晴らしいのかを再考するきっかけとなった。私にとっては、伝統、デザイン、機能性、そして率直に言って、2016年に初めて新型デイトナを手にしたとき、あるいはその何年も前に初めてヴィンテージデイトナを手にしたときに感じた特別な感覚を保ちながら、デイトナをつけてやっていけないことはないという事実だ。先代までのデイトナに取って代わるものでないし、率直に言って、ロレックスの販売店では、この時計が誰かの最初のデイトナになる確率はゼロに等しい。

Rolex Daytona Le Mans
これは? これはいい時計だ。

 ル・マンは誰かが唯一持つモダンなデイトナになる可能性はあるだろうか? もちろん、その重量と、WGはロレックス独自のSSよりも傷がつきやすいという事実に慣れることができれば、そうなる可能性はある。ここに見られるポリッシュ仕上げのセンターリンクや、現行デイトナすべてに見られるポリッシュ仕上げのミドルケースは、深刻な形で傷が付きやすい。しかし、それはロレックスにとって目新しいことではないし、もしそれが本当に問題であれば、ロレックスはそれについて何かしら対処するはずだ。そうしないということは、ロレックスはこの時計が本来の性能を発揮していると感じているのだろう。それだけで私にとって十分だ。

他のデイトナ同様、オイスターブレスレットにはポリッシュ仕上げのセンターリンクが施されている。

ミドルケースもまた、プッシャーのキャップとともに美しくポリッシュされている。

ル・マンの競合モデルはあるのだろうか? あるとは思えないが、強いて挙げるならば…

2本の3レジスター、オープンケースバック、WG製の時計が、クロノグラフの2大ファミリーを代表する。

 ル・マンとの競合モデルを考慮せずして、“A Week On The Wrist”を語ることはできないだろう。この時計に匹敵するようなものは、入手が不可能なだけに、なかなかないのだ。WGのロイヤル オーク クロノグラフ? だが、それはちょっとしっくりこない。私が思いつく最高のものは(市場で手に入れることがいかに難しいかという話ではないとして)カノープスゴールド™のオメガ スピードマスター プロフェッショナルだ。この2本の時計は、一方が自動巻き、もう一方が手巻きだが、それ以外はほとんど同じであり、時計製造の歴史において最も重要な2本のクロノグラフシリーズを代表するものだ。また、どちらも現実ではめったにお目にかかれない点も共通している。

 さて、ここで興味深いのは、カノープス™仕様のスピードマスターのほうがル・マンよりも小売価格が高く(カノープス™は純粋なWGではなく、プラチナ、ロジウム、パラジウムを含む合金であるため、強烈な白色を持つ)、さらにほかの要素があるため、腕につけたときの重量がさらに重くなるということである。正直なところ、カノープス™仕様の3861はとんでもなく重いのだが、しばらくつけていると、その重さを愛おしく感じないわけにはいかなくなる。どちらのムーブメントの仕上げが優れているか? もちろん一方にはローターがあって、もう一方にはないものの、同等レベルだ。

オメガの手巻きムーブメント、Cal.3861。
ロレックスの自動巻きムーブメント、Cal.4132。
 この2本は、いくつかの点で似た特徴を持つヘビー級チャンピオンである。というのも、私が上の動画を収録した時点では、ル・マンの2次流通市場での平均取引価格は約23万5000ドル(日本円で約3562万円)だったからだ(年のため、希望小売価格は日本円で税込740万7400円)。これは、ル・マンとカノープス™仕様の3861、あるいは率直に言って地球上のほかのクロノグラフを比較することがまったく意味をなさないもうひとつの理由である。

ロレックス デイトナ ル・マン Ref.126529LNの今後
Daytona Le Mans on the wrist
何本製造されるのか? ホワイトダイヤルやYG仕様は登場するのだろうか? 読者と同様、私にもわからない。

 私は上の動画でこのことについて数分間話したが、いまだ文章がお好きな方のためにお伝えすると、ル・マンの見通しは依然として不透明だ。2024年は約2400本、来年はホワイトダイヤル仕様が2400本製造されるという報道とは裏腹に、公式には何も発表されていない。すでに生産終了しているという噂もあったが、私は先週納品されたばかりの1本を知っているので、そうではないと確信している。ル・マンはまさに、私(そして我々)が夢見るモダンデイトナなのだが、もしそうでないのなら、ロレックスがこの時計を永久に作り続けるのなら、この時計への欲望を再考することをお勧めする。なぜなら、“エキゾチック”ダイヤルは、当時のようにカタログで通常仕様のダイヤルと並んで生きるに値するからだ。

 私はそれが“今”実現すると言っているわけではない(私はこの件に関して、あるいはロレックス社の計画に関して、内部情報をまったく持っていない)。私はここで、一介のファンの妄想を話しているだけだ。ロレックスがこのダイヤルをこの先何年も作り続け、欲しい人が誰でも手に入れられるようになるのが私の夢だ。それは実現するだろうか? おそらく無理だろう。しかし、時が経てば、多くの人が驚くかもしれない。昔、SS製のデイトナを手に入れるのがどれほど不可能だったか覚えているだろうか。いま、あなたの#watchnerdの友人のうち、何人が持っているか考えてみて欲しい。まだ多くはないが、何人かは持っているはずだ! ル・マンも同じだろう。純粋に入手不可な存在であろうとも、ロレックス デイトナ ル・マンは、ロレックスとモータースポーツの歴史において特別な存在なのである。というのも、ル・マン・デイトナは、時計コレクターの心をも熱くさせる特別な存在でありながら、日常的に着用できるほど使い勝手のいい、実に優れた時計だからだ。換言すれば、デイトナ ル・マンはロレックス時計コピーNランク 代金引換を激安の最高峰モデルなのだ。だから私はこの時計が大好きなのだ。

 それにしても、2013年にル・マンという名の時計について延々と綴った人間がほかに何を言えるというのだろう。私にとって、ル・マンと呼ばれるロレックスの新しいクロノグラフほどクールなものはない。

※編注;本稿で取り上げたホワイトゴールド製のデイトナ ル・マン Ref.126529LNは、先日の Watches&Wonders期間中に生産終了となるとのニュースが飛び込んできた。詳しくは、記事「Breaking News:ロレックス ホワイトゴールド製の“ル・マン” デイトナが生産終了」をご覧いただきたい。

チューダーのダイバーズクロノグラフにふさわしい、クラシックなカラーウェイだ。

スペックや技術的な詳細は、既存のブラックベイ クロノから変更されていない。つまり、41mmのスティールケースで厚さは14.4mm、ラグからラグまでの長さは49.8mmである。ベゼルはアルミニウム製インサートを備えた固定式で、防水性能は200m。そして“ブルーブティック”には、チューダー独自のT-Fitを搭載したSS製の5連ブレスレットが装着されている。

内部には、過去のブラックベイ クロノでも採用されていたMT 5813ムーブメントが引き続き搭載されている。これはブライトリング B01をベースにした2万8800振動/時(4Hz)の、コラムホイール式垂直クラッチ自動巻きムーブメントだ。また約70時間のパワーリザーブ、6時位置の日付表示、そして45分積算計のクロノグラフも備えている。

人気のチューダー スーパーコピー代引き専門店!ブラックベイ クロノ ブルー ブティックエディションの定価は79万2000円(税込)で、世界各地のチューダーブティックで販売される予定である。

我々の考え
誤解を恐れずに言えば、もし“ブルーのブラックベイ クロノは存在するか?”と聞かれたら、答えを確信するのに5秒もかからなかっただろう。それほどクラシックなカラーであり、チューダーが新作を発表する際に早い段階でよく使用する色だからだ(ヘリテージ クロノ ブルー、ブラックベイ ブルー、ペラゴス FXD MN21など)。それほどまでにチューダーのラインナップでは定番のカラーだが、今回ブラックベイ クロノのブルーバージョンが登場するのは初めてである。そしてとても素晴らしい仕上がりだと僕は思う。ブラックよりも落ち着いていて、ホワイトダイヤルよりも控えめであると感じる。

要するに今回の話はこうだ。ブラックベイ クロノは基本的に同じだが、今回はブルーバージョンが登場したということ。色合いはミディアムダークでサンレイ仕上げ、シルバーのインダイヤル、そしていくつかの小さな赤いアクセントが特徴だ。全体として、BBクロノの外観は予想どおりとはいえ素晴らしいもので、スティールとブルーの組み合わせを引き締めるテーパードされた5連ブレスレット(T-Fit付き)が特に気に入っている。

なお(ジュネーブ・ウォッチ・デイズ開催中の)今週は、これが数日間のうち発表される唯一の新作ではないので、引き続き注目して欲しい。

基本情報
ブランド: チューダー(Tudor)
モデル名: ブラックベイ クロノ “ブルー” ブティックエディション(Black Bay Chrono “Blue” Boutique Edition)
型番: M79360B-0002

直径: 41mm
厚さ: 14.4mm
ラグからラグまで: 49.8mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤: ブルー
夜光: あり、針とインデックス
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: “T-fit”クイックアジャストクラスプ機能付きの5連SSブレスレット

tudor chrono blue
ムーブメント情報
キャリバー: チューダーマニュファクチュールMT5813
機能: 時・分・スモールセコンド、日付表示、クロノグラフ(45分積算計)
直径: 30.4mm
厚さ: 7.23mm
パワーリザーブ: 約70時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 41
クロノメーター: あり、COSC認定(さらにチューダーが日差-2~+4秒の精度を保証)
追加情報: 非磁性シリコン製ヒゲゼンマイ

価格 & 発売時期
価格: 79万2000円(税込)
発売時期: 全国各地のチューダーブティックにて販売
限定: なし

史上最高のトゥールビヨンウォッチ3本が今週一挙に登場

もし街で私に近づいて、「ねえ、ベン、1990年代に作られた最高の時計は何?」と尋ねられたなら、私は迷わずこう答えるだろう。「A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン“プール・ル・メリット”だ」と。そしてさらに、「ねえ、ベン、君が実際につけてみたい、あるいは所有したいトゥールビヨンウォッチがあるとしたらどれ?」と聞かれたとしても、やはり私はこう答えるだろう。「A.ランゲ&ゾーネのトゥールビヨン“プール・ル・メリット”だ」と。

ランゲの再出発の後光がさしたのは、まさにトゥールビヨン“プール・ル・メリット”であった。

確かに、私はこの時計がたまらなく好きだ。多くの人がPLM(プール・ル・メリット)と呼ぶこの時計は、1994年に発表されたランゲの初期コレクションの一部であり、ランゲ1がその後さらに進化を遂げたことは否定できないものの、純粋なトゥールビヨンに関して言えば、オリジナルのPLMほど時計マニア(つまり、私のような“マニア”)に訴えかけるモデルはまだ出ていないように思う。オリジナルのフュゼチェーン機構、38.5mmのケース径、完璧な対称性。そしてドイツ時計の最高峰としての系譜に加え、ジュリオ・パピ(Giulio Papi)やルノー・エ・パピ(Renaud et Papi)でキャリアを積んだ、歴史的なスイスの名職人たちとのつながりもある。実際、ウォルター・ランゲ(Walter Lange)自身も特別な機会にのみこの時計を身につけるほどだった。私にとって、これ以上の時計はない。

だが、実はこのPLMが今あまり注目されていないのだ。今週から来週にかけてジュネーブで3本のPLMが出品される予定であるため、皆にもぜひ知っておいてもらいたい。

PLM Hero
A.ランゲ&ゾーネスーパーコピー 代引きの“プール・ル・メリット”シリーズ。

まず、出品される3本の時計について触れる前に、“プール・ル・メリット”がランゲにおいてどういう存在かを理解しておくことが重要だ。そしてそれを知るには、2017年のHODINKEEに掲載されたこの記事以上の資料はないだろう。歴史的に見れば、PLMコレクションの時計はランゲのコレクターたちにとってまさに“山の頂上”とされてきた。だが最近ではブランド自身も新しい世代の購入者も、このコレクションに以前ほど焦点を当てていないように思う。

それでも、オリジナルのトゥールビヨンPLMは、私にとって現代最高のトゥールビヨンだ(あるいは、少なくともトップ2には入るだろう。もうひとつはもちろん、ジュルヌの“トゥールビヨン・スヴラン”だ。ちなみにこの2本の時計は、2016年に書いた“トゥールビヨンを嫌う男性(または女性)のための7つのトゥールビヨン”という記事でも大きく取り上げている)。しかし、この時計はかつてのような魅力を感じさせなくなってきているように思う。正直なところ、PLMは長年にわたって私の“究極の時計”であり続けてきた。それはおそらく2013年ごろからだろうし、それは今も変わっていない。実際、何度も購入に近づいたが、さまざまな理由でそのたびに指をすり抜けた。

参考記事: 1990年代のA.ランゲ&ゾーネの知られざる8つの事実

“1週間で3本も出品されるなら、いいPLMを見つけるのはそんなに難しくないんじゃないか?”と思うかもしれないが、そこには理由がある。6カ月前まで、最も一般的なイエローゴールド以外のトゥールビヨンPLMが市場に出回ることは極めてまれだった。私の見立てでは、2~3年に1回見るか見ないかの頻度であり、ほとんど手放す人がいなかったのだ。それが6カ月ほど前から、いくつかの個体が姿を見せ始めた。ここニューヨークのChrono24に、オリジナルオーナーが所有するプラチナモデルが出品されたのを発見し、売主と話をしたものの、提示価格があまりに高すぎた。さらに同じころ、ACM(A Collected Man)の友人たちもこの時計をリストに加えていた。そしてまた、ある有名なドイツのディーラーが3本目のプラチナPLMを販売リストに載せたのだ! 15年間この時計に注目してきたが、同時に3本のプラチナPLMが出品されるなんて、信じられなかった。にもかかわらず、それらは市場に出たまま長いあいだ動かなかった。最終的には売れたと思われるが、どれも40万ドル(日本円で約6160万円)以上、一部は50万ドル(日本円で約7700万円)以上という価格だった。売主に話を聞くとそれが問題だったのだ。購入希望者はいたが、売主が期待する価格帯には届かなかったのである。

私は混乱した。私の世代のランゲ愛好家にとって、PLMはランゲの王者だ! 友人であり同僚であり、次世代のランゲファンを代表する存在だと思っているHODINKEEのタンタン・ワンにメッセージを送った。彼のPLMへの反応は? “うーん、まあクールだとは思うけど”というものだった。彼にとっての興味は、むしろ今のランゲにあるらしい。ブランドの過去を尊重しつつ、未来へと進んでいくランゲとともに歩むことに重きを置いているようだ。

l1 onyx wristshot
ブランド誕生30周年を記念した新作、ランゲ1 オニキスダイヤル。

 “僕のような若いコレクターには、最近のランゲ1 オニキスダイヤルのような新作が、ランゲの歴史の一部に自分も加わっていると感じさせてくれる。オリジナルに対する敬意を感じつつも、異なるテイストがあるものを製作してくれると、ブランドの“黄金時代”を逃したという疎外感もなくなるし、ただブランドをコレクションするために現行品を買わなくても済む気がするんだ”と彼は語る。

タンタンのように、歴史的なモデル、たとえば希少な宝石セットの作品やイエロージャケット、初期のクローズドケースバック仕様のランゲ1などに興味を示さない現代のランゲ購入者は少なくない。だが私に言わせれば、それらのモデルもトゥールビヨンPLMも、まだまだこれから評価が高まっていくと思っている。

希少なランゲ トゥールビヨン“プール・ル・メリット”が3本、同じ街、同じ週に出品される
素晴らしい時計、特にランゲの時計が売りに出されていることを皆に知らせるのは、この上ない喜びだ。5年前、私は最高のランゲ1が3本販売されていると紹介したが、今回は最高のトゥールビヨンランゲが3本も出品されていることを伝えられることがうれしい。しかもすべてがオリジナルの“プール・ル・メリット”であり、最も一般的なYG製シルバーダイヤルは1本も含まれていない。実際には、異なる金属とダイヤルカラーの3本がそろっている。こんなラインナップがそろうのは前代未聞だ。

プラチナ製のトゥールビヨン“プール・ル・メリット” シルバーダイヤル(No.43/50)

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Image: courtesy of Sotheby’s

では今回出品される時計について見ていこう。私が一番欲しくて、いつか手に入れたいと心から思っているPLMのバージョンを挙げるなら、このモデルだ。本作はプラチナケースにシンプルなシルバーダイヤルを備えたモデルで、50本限定で製造されたものだ。YGに次いで比較的流通しているモデルだが、少なくとも歴史的には市場に出回ることがきわめて少ない。というのも、これら50本は資金力のあるコレクターたちの奥深いコレクションに収まっており、市場に姿を現すことは何年もなかった。たとえウェブサイトに掲載されたとしても、即座に売れてしまう。今回サザビーズに出品されているのは、50本ある内の43番目で、フルセットが揃っているようだ(これは必ずしも当たり前ではない)。ただ保証書がサイン入りか未記入かについてはまだ確認していない。ランゲのセットでは、この点が重要な違いをもたらすことがあるようだ。推定価格は25万~50万スイスフラン(日本円で約4390万~8785万円)。詳細はこちらから。

ピンクゴールド製のトゥールビヨン“プール・ル・メリット” ブラックダイヤル(No.120/150)

PLM Tourb Pink Gold Black
Image: courtesy of Sotheby’s

サザビーズ・ジュネーブに出品されるもうひとつのモデルが、このブラックダイヤルを備えたPG仕様のPLMだ。特別なPLMのなかでは比較的見かけることが多いバージョンであり、私にとってはYGより上位、プラチナには一歩及ばない位置にある。とはいえ、その希少性は際立っており(プラチナが50本に対してこちらは24本)、サザビーズでは未記入の証明書とともにオリジナルのタグなど、多彩な付属品が揃った状態で提供される。推定価格は15万〜30万スイスフラン(日本円で約2635万~5270万円)。詳細はこちらから。

ホワイトゴールド製のトゥールビヨン“プール・ル・メリット” ブルーダイヤル(No. 102/150)

Tourbillon PLM Blue
Image: courtesy of Phillips

最後に、サザビーズとは別の会場であるフィリップスが、もう1本の希少なトゥールビヨンPLMを出品した。この個体(150本中102番)はWGにブルーダイヤルを備えており、19本のみ製造された特別なモデルだ(20本目のWG製PLMはブラックダイヤル仕様で存在する)。そのため、このWG×ブルーダイヤルはPLMのなかでも特に希少で人気が高いバージョンのひとつと言える。補足として説明しておくと、今回のWGと前述したPGモデルはどちらも150本限定のナンバーが振られているが、この150本という数は、すべてのゴールド製PLM(さまざまなタイプとダイヤルの組み合わせ)を含む総製造本数を指している。フィリップスによると、その内訳は以下のとおりだ。

18KYG: 106本(Ref.701.001/Ref.751.001/Ref.701.301)
18KWG: 20本(Ref.701.007)
18KPG: 24本(Ref.701.011)
プラチナ: 50本(Ref.701.005)
スティール: 1本

フィリップスによると、WG×ブルーダイヤルの組み合わせがオークションに登場したのは過去に1度だけで、私も11年前に取り上げている。いやはや、ずいぶん長くやってきたものだ。

とにかく、今回の推定価格は15万〜30万スイスフランだ。詳細はこちらから。

トゥールビヨンPLMの価値と収集性に関する簡単な考察
PLM Tourbilon
ここまで読んで伝わっているかもしれないが、私はこれらの時計の価格動向を常に細かくチェックしている。すべてのモデルでだ。YGモデルも例外ではなく、C24(Chrono24)で今まさに3本出ているものの、通常は簡単には手に入らない。最近では価格が大きく変動しており、今の市場は売り手の希望価格と買い手の提示価格の差が非常に広がっている時期だと思う。

現在の状況はほかの多くの市場と変わらない、今や存在しない市場環境にしがみつこうとする人もいれば、現実に即した取引をしたい人もいる。過去12カ月で何本か出品されているトゥールビヨン“プール・ル・メリット”の特別モデルに対して、ディーラーが40万〜50万ドル(日本円で約6160万~7700万円)の価格を付けている状況も同じだ。これら3本が売れたあとに、彼らはその価格を妥当と感じて再出品するかもしれないし、もしくは多くの人々がこの素晴らしいヴィンテージウォッチに支払いたい価格について、現実的な再評価を行うことになるかもしれない。結局、答えを出すのは時間だけということだ。