ゼニス新作3選、エル・プリメロは進化できたか?2026年レビュー

2026年、ゼニスはブランドの心臓ともいえるエル・プリメロ(El Primero)を核に、
クロノマスター リバイバル A386、パイロット タイプ20 カーボン、デフィ スカイライン サファイアの3本を発表した。
いずれも1969年の伝説的ムーブメントを現代に再解釈したものだが、
果たして単なる懐古趣味ではなく、“今”の時計として成立しているのか。
実際に着用し、その精度、装着感、そして日常での実用性を検証した。

クロノマスター リバイバル A386は、復刻に留まらないのか?

1969年に登場したオリジナルA386は、トリカラー(白・青・グレー)のサブダイヤルで知られる名作だ。
2026年モデルはケース径を38mmから41mmに拡大し、現代の手首にも馴染むように改良された。
サテン+ポリッシュ仕上げのステンレスケースは、光の当たり方で表情を変え、
スーツにもカジュアルにも自然に溶け込む。

搭載されるCal. El Primero 3600は、36,000 vph(5Hz)の高振動数を維持しながら、
60時間パワーリザーブを実現。さらに、1/10秒単位のクロノグラフ表示が9時位置に追加され、
実用性も向上している。

中国公定価格は¥79,800(約178万円)。
このクラスで自社高振動クロノグラフ+復刻デザイン+現代的サイズを備えるモデルは、他にない。

パイロット タイプ20 カーボンは、本当に軽量かつタフなのか?

ケース素材にウルトラライトカーボンを採用したこのモデルは、
直径45mmながら重量はわずか78g。従来のチタンモデル(約120g)よりさらに軽く、
長時間の着用でも手首に負担がかからない。

ベージュダイヤルと焼きブルー針の組み合わせは、
ヴィンテージ航空計器を思わせるが、スーパールミノヴァ夜光により暗所でも視認性抜群。
大型リューズはグローブ着用時でも操作可能で、工具表としての本質を守っている。

ただし、カーボン素材は硬いが脆いため、鋭角的な衝撃には注意が必要。
アウトドアや旅行には最適だが、建設現場など極端な環境ではリスクがある。

中国公定価格は¥92,000(約205万円)。
軽量・高機能・個性的——この3つを両立する稀有な一本だ。

デフィ スカイライン サファイアは、透明ケースが実用に耐えるのか?

ケース・ベゼル・裏蓋すべてが完全透明のサファイアクリスタルで構成されたこのモデルは、
内部のグランド・フローラル装飾(モザイク模様)が360度から見える。
特に光の下では、ダイヤルがきらめき、まるで“氷の中の花”のように美しい。

搭載されるCal. Elite 670 SKYは、50時間パワーリザーブの自動巻きで、
日差±4秒以内と安定している。ただし、防水性能は100mと控えめ。
シャワーや水泳は避け、日常の手洗いや雨天程度に留めるのが無難だ。

重量は112gとやや重いが、一体型ラバーストラップが快適なフィット感を提供する。
これは“見るための時計”であり、“使うための時計”ではない。
所有する喜びが、使用する喜びを上回る一本だ。

中国公定価格は¥138,000(約308万円)。

結局、どのモデルが最もおすすめできるのか?

– クラシックと高性能を両立したい → クロノマスター A386
– 軽量・タフ・個性派を求める → パイロット タイプ20 カーボン
– 芸術性と透明性に惹かれる → デフィ スカイライン サファイア

ゼニスは今回、「エル・プリメロという遺産を、過去に閉じ込めていない」 ことを証明した。
2026年、これらの新作はどれも、歴史を背負いながらも、未来を見据えた一本となっている。

ロンジンの“海陸空”トリロジー|伝統と現代の融合

ロンジンの“海陸空”トリロジー|伝統と現代の融合
皆さんは「ロンジン」の時計と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
「エレガント」、「クラシック」、あるいは「コスパの良さ」など、様々な答えがあるかと思います。確かに、名匠(マスターコレクション)やコンククス(潜水表)は、現代的なロンジンの顔として広く知られています。
しかし、近年のロンジンにはもう一つの顔があります。それは、歴史的な遺産(ヘリテイジ)から着想を得た「ヴィンテージ(復刻)」路線です。
今回は、そんなロンジンの復刻モデルに注目し、「海・陸・空」をテーマにした三つの名作をご紹介します。これらは単なるレプリカではなく、現代の素材と技術で蘇った、まさに「伝説の再現」です12。
1. 海:伝説の潜水員 39mm|1959年のDNAを継承
ロンジンの復刻版「海」の申し子が、「レジェンド・ダイバー(Legend Diver)」です。
その原点は1959年に発表されたRef.7042。今回の39mmモデル(L3.764.4.50.7)は、従来の42mmや36mmという極端なサイズ感がたびたび話題になっていた中で、2024年に発表された「ちょうど良い」サイズのモデルです12。
特徴的な仕様
スーパーコンプレッサー構造: これはロンジン独自の技術ではなく、当時のサプライヤーである「エルドール」社のシステムです。表ケースと底蓋を金属バネで固定し、水圧が高まると逆にケースが締まるという、非常にユニークな構造(同期のジャガー・ルクルトやハミルトンも採用)1。
ツインクラウン(2つのリューズ): 2時位置のリューズで内側の回転ベゼルを操作。4時位置のリューズで時分針を調整します1。
ノンデイト: 今回は日付表示が廃止され、文字盤は歴史的なモデルに忠実な、左右対称の美しいバランスを実現。アームチェアパイロット(腕時計愛好家)にはこの「無駄のなさ」がたまらないポイントです2。
モダンスペック
ムーブメント: L888.6自動巻き機械式(72時間パワーリザーブ、COSC公認天文台認定)12。
文字盤: 拱形(アーチド)サファイアクリスタル。
2. 陸:クラシック復刻 ミリタリー 月相|1950年代の優雅さ
「陸」のモデルは、1950年代末に誕生した「ミリタリー(軍旗)」シリーズの復刻版。中でも注目は、2023年に登場した「月相」モデル(L4.815.4.72.2)です12。
特徴的な仕様
「金のへそ」: 裏蓋には「帆船」のエンブレムが施されており、周囲を青色のエナメルで囲んだこのデザインは、当時の高級ラインにしか与えられなかった「金のへそ(Gold Navel)」と呼ばれるもの12。
月相表示: 6時位置に月相と日付を配置。太陽紋(サンレイ)仕上げの文字盤(シルバー、ブルー、アイボリーの3色展開)と、太いポインター針(太股針)が、当時のエレガントな雰囲気を再現12。
モダンスペック
ケース径: 38.5mm。やや小ぶりなサイズ感が、現代のクラシックウォッチファンに支持されています。
ムーブメント: L899.5自動巻き機械式(L888ベースに月相モジュールを搭載、シリコン遊丝採用による抗磁性能)12。
3. 空:チェコ空軍 1935 (MAJETEK)|1935年の軍用時計を現代に
最後の「空」は、「チェコ空軍 1935」、もしくは愛称で「マジェテク(Majetek)」です。
1935年、チェコ空軍は浪琴、レマニア(Lemania)、エイジャーマール(Eterna)などに軍用時計の供給を依頼しました。この時、各社が生産した時計には「MAJETEK」(チェコ語で「軍事財産」の意)という刻印が施されていました12。
特徴的な仕様
回転ベゼル: 2014年の初版復刻モデルとは異なり、今回は回転ベゼルが復活。文字盤内の矢印と連動し、計時機能が使用可能になりました。
「鉛筆針」: 細く尖った針(ピencil hands)は、当時の軍用時計ならではの緊張感のある表情。
リューズガード: 大きなリューズを保護するガードが設けられ、視覚的なバランスが大幅に改善されています。
モダンスペック
ケース径: 43mm。枕形(クッション)ケースが、男性的な存在感を放ちます。
ムーブメント: L893.6自動巻き機械式(25,200振動、72時間パワーリザーブ、600ガウスの抗磁性能、COSC認定)2。
まとめ:ロンジン復刻モデル「海陸空」比較表
モデル名 テーマ 原型年 主な特徴 推奨される人
レジェンド・ダイバー 39mm 潜水 1959 スーパーコンプレッサー、無歷、39mm径 小ぶりな潜水表が欲しい人、ヴィンテージファン
クラシック復刻 ミリタリー 正装 1950s 月相、金のへそ、38.5mm 優雅なデザインを求める人、コレクター
チェコ空軍 1935 航空 1935 回転ベゼル復活、鉛筆針、43mm ミリタリーウォッチ愛好家、存在感を求める人
総評
ロンジンのこれらの復刻モデルは、単に「古いデザインを真似る」のではなく、「現代の技術で弱点を補う」という点が優れています。
例えば、当時のモデルでは難しかった72時間の長時間巻上や、高い防水性能、抗磁性能を備えていることです。
2026年の冬、あるいは新春を迎えるにあたり、プレゼントや自分へのご褒美として、この「海陸空」の三作品の中から、自分だけの一品を選んでみてはいかがでしょうか。

腕元に蘇る1935年のエアパワー:ロンジン「1935年型クロノメーター」復刻

今や「復刻(リ・エディション)」は、高級時計界のスタンダードな手法となりました。しかし、ただ古いデザインを真似るだけのモデルが多い中、ロンジン(Longines)は一味違います。
その理由は明白で、他ブランドが苦労して収集する資料も、ロンジンには自社で管理する世界有数の「時計界のタイムカプセル」とも呼べるアーカイブがあるからです。
そんなアーカイブの中でも、特に高い人気を誇るのが、1930年代の軍用時計です。今回は、その中でも一際異彩を放つ、「1935年型 クロノメーター(通称:チェコ空軍モデル)」の最新復刻モデル(Ref. L2.838.4.53.0)に注目します。
1. 1935年の原点:チェコ空軍の信頼
第二次世界大戦前、当時のチェコスロバキア空軍は、欧州屈指の精鋭部隊でした。その航空機のコックピットや、パイロットの手首には、過酷な環境下でも正確に機能する計器が求められていました。
1935年、ロンジンはそんなチェコ空軍の要請に応え、「究極のパイロットウォッチ」を製作。その目的は極めてシンプルかつシビアでした。
「グローブ(手袋)をしたままでも操作でき、乱気流の中でも視認でき、強烈な日差しでも時刻が判別できる」
今回復刻されたモデルは、そんな歴史的名作を、現代の技術で甦らせた一振りです。
2. 外観:原作への絶対的忠誠
今回の復刻で最も注目すべき点は、「細部へのこだわり」です。
ケースデザイン: 径43mm、厚さ13.3mmの「枕型(クッション)ケース」」。当時の風合いを損なわないよう、エッジは丸みを帯びており、ラグ(リュウズ)部分の造形も原作を忠実に再現しています。
回転ベゼル(復活): 2014年の旧復刻版(Ref. L2.794)では省略され物議を醸した「凹溝付き回転ベゼル」が、今回完全復活しました。これは単なる装飾ではなく、パイロットが経過時間を計測するための重要な機能です。また、ベゼル回転時に風防が動かない構造(風防固定式)を採用しているため、防水性能も高く保たれています。
文字盤: 哑光ブラックの文字盤には無駄な装飾は一切なし。太く力強いアラビア数字と、外周の分刻み。そして、原作にも存在した「ペンシル針(鉛筆針)」」を採用。6時位置には大きなスモールセコンド(小秒針)を配置。視認性だけを追求した、まさに「時計本来の姿」です。
3. 中身:現代の技術で武装
見た目は1930年代そのものですが、中身は立派な21世紀のハイテクウォッチです。
ムーブメント: 「L893 自動巻きムーブメント」を搭載。これは、定評のあるエタ製ベースをベースに、ロンジンが独自にチューニングした機芯です。
性能:
パワーリザーブ: 約72時間(3日間)。週末に外しておいても、月曜日には動いてくれる、現代人にとって非常に使い勝手の良い性能です。
耐磁・耐熱: シリコン製遊丝(Si)を採用しているため、磁気や温度変化による誤差が少なく、実用精度はピカイチです。
裏蓋: ソリッドケースバック(密閉式)で、裏蓋には「PILOT MAJETEK」(軍用財産)の文字が刻印。これは、かつての軍用時計が国家資産であったことを示す証です。
4. 総評:なぜ今、この時計なのか?
近年、時計市場では「小さくて繊細なドレスウォッチ」が注目されがちです。しかし、この「1935年型」は、そんなトレンドに逆行するかのような「存在感」を持っています。
43mmという大振りなケース径と、重厚な枕型ケース。しかし、ラグの形状のおかげか、実際に手首に載せると意外としっくりと馴染みます。
「ロンジン」というブランドは、単なる高級時計メーカーではなく、「航空史と密接に関わってきたブランド」です。その原点の一つであるこの時計を身につけるということは、単に「かっこいい時計をつける」ということではなく、「時計の歴史そのものを身に纏う」行為に他なりません。