機芯を逆さにすることで、グラスキュッテが都市を彫り上げる

ドレスデン。これはドイツ第二の都市であるだけでなく、ヨーロッパを代表する美しき文化の都です。聖母教会(Frauenkirche)やツヴィンガー宮殿(Zwinger)に代表されるように、その数々の象徴的な建築物は「バロックの街」そして「エルベ川上のフィレンツェ」と呼ばれる所以です。
19世紀初頭、ドレスデンの芸術と科学が花開く中、数多くの時計師たちがこの街を離れ、わずか35分の距離にあるグラスキュッテの町へと向かいました。そこが、ドイツ製時計業界の輝かしき歴史の始まりでした。
この「ドレスデン」という街に敬意を表し、グラスキュッテ・オリジナル(Glashütte Original)は限定25本の「アンダージー(逆さ)」モデルを発表しました。
グラスキュッテ美学の頂点:偏心と逆さ構造
偏心シリーズは同ブランドを語る上での看板シリーズですが、そこに「機芯逆さ(Durchsehen)」構造を加えたモデルは、まさにドイツ製時計美学の頂点といえるでしょう。
このモデルは、伝統的な正装時計の対称レイアウトを打ち破り、非対称な文字盤構成を採用。そして何より大胆なのは、機芯構造を裏返し、本来裏蓋側に隠れている3/4夹板(スリーフォース)、ダブル・スワンネック(鵞頸微調)、テンプなどを文字盤側にそのまま露出させている点です。これこそが、現在の時計界で最も識別性の高いデザインの一つです。
手彫刻で綴るドレスデンの風景
本作の最大の見どころは、その文字盤と裏蓋に施された手彫刻(Hand Engraving)です。
文字盤側(表): 42mmのプラチナケースに収められた文字盤。文字盤左上に位置する3/4夹板は、まるでキャンバスのようにドレスデンの街並みに変貌を遂げています。美術アカデミーの屋根や「ファマ女神像(Fama)」、そして聖母教会の有名な「鐘型石造ドーム」などが精巧に彫り出されています。さらに、飛翔する鳥や雲、熱気球といった日常の風景も織り交ぜられ、息をのむような緻密さです。
装飾の細部: 3時から6時位置に位置するスワンネック微調装置には、バロック様式の装飾彫刻が施され、その芸術性をさらに引き立てます。
時を計るディスクは「宙」に浮かべて
この手彫刻による景観の驚異的な一体感を損なわないため、時間表示はあえて「宙」に浮かせる設計とされています。
表示方式: クラシックな小三針。時・分・秒は文字盤よりも上の層に位置するディスクで表示されます。
レイアウト: 時分盤と小秒盤が重なり合い、文字盤左上に配置。これを3本のブルースチール(青焼き)ネジが支えています。
ビッグデイト: 2時位置には、エッジに面取り装飾が施されたビッグデイト・ウインドウを配置。
裏蓋もまた「表」である
この時計の魅力は、裏蓋側にも負けていません。
裏蓋の彫刻: 裏蓋の基板もまた完全に手彫刻されており、エルベ川沿いのプロムナードや他の象徴的な街並みを描いています。
パーツの装飾: 手彫刻されたロジウムメッキフレーム、磨き上げられた鋼製パーツ、面取りエッジ、ブルースチールネジは、グラスキュッテの伝統技術の粋を尽くしています。
镂空(ロータ): 自動車(ローター)は透かし彫り加工されており、その形状は聖母教会のシンボルを模しており、文字盤正面のドレスデンを象徴するランドマークと呼応しています。
技術的裏付け:Cal.91-03
本作を支えるのは、ブランド自社製のCal.91-03型自動巻きムーブメントです。これは、定評のあるCal.91-02をベースに特注開発されたモデルです。
性能: 45時間の動力貯蔵。
振動数: 時速28,800回(4Hz)。
精度: ダブル・スワンネック微調装置により、より細かくかつ正確な時刻調整が可能となり、優れた精度を保証しています。
総括
プラチナケース、文字盤・裏蓋両面に施された手彫刻、そしてグラスキュッテを代表する「偏心」と「機芯逆さ」構造。
ここまで芸術性が高く、限定25本という希少性を持つモデルは、現在のスイス時計界や世界の製表業界の中でも、最も誠実でコスパの高いブランドと言えるでしょう。これはまさに、手の届く範囲の「芸術品」です。

エドックスがクロノラリー スポーツマン クロノグラフの新作を1月12日発売~

EDOX( エドックス)が、伝説のカーレーシングドライバーであるファン・マヌエル・ファンジオの栄光を称え、クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティックの限定モデルを、11月12日に全国の正規販売店およびエドックス オンラインストアで発売します。

エドックスとファン・マヌエル・ファンジオ
1884年の創業以来、エドックスはスポーツシーンと深く結びつき、とりわけモーターレースとの関係において独自の存在感を放ってきました。耐久性、防水性、精密性を追求する姿勢は、極限の状況下で勝負が決するレースの世界と共鳴し、世界ラリー選手権(2009年)、(ダカール・ラリー 2012年)、FIA世界ラリークロス選手権 (2019年)といった最高峰の競技大会で公式計時を担当、「ザウバーF1チーム」のプレミアムパートナーに就任( 2016年)した実績も持っています。2021年には、「BMW M モータースポーツ」とのスポンサーシップを締結し、発売した記念モデルが大きな話題を呼びました。

この度、アルゼンチンにあるファンジオ博物館の協力により、1950年代のF1で5度の世界チャンピオン[※1]に輝き、「エル・マエストロ(巨匠)」と称えられた伝説のレーサーであるファン・マヌエル・ファンジオ(1911~1995年)の栄光を称える限定モデルを発売いたします。

ファンジオは、冷静な判断力と的確なマシンコントロールによって、命に関わる深刻な事故が多発していた1950年代のF1で生涯無傷。アルファロメオ、メルセデス・ベンツ、フェラーリ、マセラティという4つの異なるチームで戦い、圧倒的な勝率を誇りました。アイルトン・セナやミハエル・シューマッハらと並び、史上最も完成度の高いドライバーの1人と評価され、母国アルゼンチンでは国民的英雄として尊敬されています。ドライバーとしてのファンジオの圧倒的な技術と万能性は、エドックスが体現してきた精度と信頼性の精神と重なります。本作は、クラシックレーシングの精神を現代に蘇らせるとともに、ファンジオの不滅の遺産を永遠に伝えるタイムピースです。

[※1]2003年にミハエル・シューマッハに破られるまで、46年もの間、史上最多記録を誇っていました。

≪特徴≫
ネオ・ヴィンテージウォッチ
1972年に発売したスポーツマン クロノグラフ 手巻き、(直径37mm)に着想を得て開発した、クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティックの、新作モデル。

1972年と今回の最新作

1970年代に流行したレトロフューチャーデザインのトノー型ケースやドーム型風防、レーシングの世界を彷彿とさせるクロノグラフ機構やタキメーターなどはベースモデルを踏襲しつつ、信頼性の高いスイス製機械式クロノグラフムーブメントを現代的な直径41mmのケースに収めています。ダイバーズウォッチの先駆者として培ってきた技術を発揮し、ベースモデルの4気圧/40m防水から30気圧/300m防水へスペックアップしました。

ファンジオの栄光を称えるレーシング仕様
モータースポーツのドライバーがレースシーンで着用することを想定し、視認性の高いダイアルにストップウォッチ機能であるクロノグラフ、フランジに平均時速を測定できるタキメーターを搭載。クロノグラフはスポーティーな印象の縦3つ目デザイン。レースの激しさを意味するレッドのクロノグラフ秒針・積算針により、ひと目で経過時間を判読可能。ダイアル4時位置にファンジオのサインをプリントしています。

レーシンググローブを着用したままでも操作しやすいよう、プッシュボタンを大きめに設計。穴から熱を逃がし通気性を高めるパンチング仕様のブラウンレザーストラップも付属します。

ケースバックは、精緻なムーブメントの鼓動を間近に楽しむことができるシースルー仕様。レーシングカーのボンネットを開け、エンジンを覗き込む瞬間に通じています。

レースの世界でパワーユニットが勝敗を左右するように、時計の心臓部であるムーブメントの精度を追い求めるエドックスの哲学をご体感いただけます。ファンジオの栄光を称える限定モデルの証明として、“TRIBUTE TO FANGIO” “LIMITED EDITION”の文言とシリアルナンバーが刻印されます。

【仕様】
クロノラリー スポーツマン クロノグラフ オートマティック
ファンジオ リミテッド エディション
品番(画像左より) :01132-3G-BEAN(オフホワイト)/01132-3BU-BUGN(ネイビーブルー)
税込み価格 :715,000円
限定本数 :各世界限定115本

ムーブメント:キャリバー EDOX011S(SW500・自動巻き)
・機能 :時・分・秒 (スモールセコンド)
・表示、日付・曜日表示、クロノグラフ
・30分積算計、12時間積算計
・タキメーター
・石数 :25石
・振動数 :28,800振動/時
・パワーリザーブ :約48時間
ケース:316Lステンレススティール
・ケースサイズ :直径41mm、厚さ16.8mm
・風防 :ドーム型サファイアクリスタル(無反射コーティング)
・ケースバック :シースルーバック
・防水性 :30気圧/300m
・ラグ幅 :20mm
・その他 :ねじ込み式リューズ
ストラップ:316Lステンレススティール (メッシュブレスレット)
・バックル種類 :片開き Dバックル
・バックル素材 :316Lステンレススティール
・付属 :レーシング仕様のブラウンレザーストラップ

[エドックス]~THE WATER CHAMPION
優秀な時計職人クリスチャン・リュフリ=フルーリーが、妻の誕生日を祝うため自身でデザインして作った懐中時計。この贈り物の美しさに感動した妻から、時計ブランドを立ち上げることを勧められ、1884年にスイスのビール/ビエンヌでエドックスを創業しました。ブランド名は、(「時間」を意味する古代ギリシャ語に由来しており、ブランドエンブレムである砂時計のマークは「不朽」を象徴しています。2024年に、創業140周年を迎えました。
創業当時は懐中時計で名を成していましたが、1950年代から腕時計の製造にシフト。世界初の特許を取得した防水機構を開発するなど、過酷な環境下でも計時機能を維持できる高性能な時計づくりを追求してきました。1961年に発表したブランド初の防水時計デルフィンに始まり、現在のフラッグシップコレクションであるクロノオフショア1、海の神を象ったネプチュニアンに至るまで、50年以上にわたってダイバーズウォッチ開発の先駆者として最前線を走り続けています。国際的なラグジュアリースポーツの大会オフィシャルタイムキーパーを務めるなど、スポーツシーンとのパートナーシップを数多く締結しています。耐衝撃性や防水性などのタフネスに優れたエドックスウォッチは、一流アスリートからも厚い信頼を得ています。

シンプルな伝統とブランドが誇る最先端の時計製造技術の違いを見事に表現したモデルたちだ。

JLCは以前にもレベルソ・クロノグラフをつくったことがある。1991年のレベルソ誕生60周年を機にJLCはレベルソに初めて複雑機構を搭載するようになった。最初は日付とパワーリザーブから始まり、トゥールビヨン、ミニッツリピーターと続いていく。そして1996年には新型のCal.829を搭載したレベルソ・クロノグラフを発表した。ブランド初のシェイプドクロノグラフムーブメントであると同時に、クォーツショック以降に初めて開発された手巻きの一体型クロノグラフでもある(当時のギュンター・ブリュームラインはJLC、ヴァシュロン、IWCが属するLMHグループを率いており、1999年にダトグラフで一体型キャリバーを発表したランゲの復活にも貢献した)。初代のレベルソ・クロノグラフは限定生産品であり、JLCは短命に終わった後続モデルのレベルソ・グランスポーツと、そのアップデート版であるCal.859も2000年代初頭まで生産した。

ジャガー・ルクルトスーパーコピー時計代引き レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
新しいレベルソ・トリビュート・クロノグラフのサイズはラグからラグまでが49.4mm、幅が30mm、厚みが11mmとなっている。私はSSのバージョンとともにほとんどの時間を過ごしたが、驚くほどクールでスポーティな着こなしができた(レベルソはポロ選手の時計に端を発しているから当然といえば当然だ)。SS製クロノグラフの表面は洗練されたブルーグレーに似たダイヤルとなっており、JLCによると酸化チタンを薄く蒸着させるADLプロセス(原子層堆積法、数ナノメートルの超薄膜を平坦な面に正確に成型する)で実現したサンバースト仕上げを施したとのことだ。クロノグラフのプッシャーは細長いレクタンギュラー形で、時計の感触を邪魔することはない。もしこの時計を時間表示のみのモデルとして身につけるのであれば誰にも気づかれることはないだろう。シャープなドフィーヌ針が2本配置されているだけで、それ以上でもそれ以下でもない。

RGのほうのクロノグラフは、ピュアブラックのダイヤルがケースをさらに引き立てている印象で、SS製よりもドレスアップしている感じだ。刻まれた“Jaeger-LeCoultre”のサインは金箔のようなローズカラーでプリント。これも細部まで考え抜かれたディテールのひとつである。

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフの裏面
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフの反転中
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ、裏面のアップ
もちろん、ここまでの話はまだ半分に過ぎない。ケースを反転させるとクロノグラフ側の文字盤が出現し、さらにスケルトンデザインがその新Cal.860をアピール。旧型のCal.859と構造的には酷似しているが、新ムーブメントはクロノグラフ機能とともに時刻を第2ダイヤルに表示している。中央のクロノグラフ秒針は60秒計を中心に回転し、6時位置にはレトログラード式のミニッツカウンターを配している。またムーブメントに施されたコート・ド・ジュネーブ仕上げのブリッジをスケルトン文字盤からはっきりと堪能できるのもポイントだ。SSケースの場合、クールでまとまりのあるモノトーンルックに仕上げているが、一方のRGケースでは色調のメリハリがなくなり、文字盤が少し騒がしいように感じる。

7時位置のコラムホイール(水平クラッチでもある)を見ていると充足感が得られる。目の錯覚だとは思うが、クロノグラフにかかわる機構の感覚を、より体感できるのだ。ムーブメントのブルースクリューと青焼き針もマッチしていて、デザイン全体にまとまりを持たせている。Cal.860は2万8800振動/時で振動し、約52時間のパワーリザーブを確保している。

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ、ローズゴールドモデル
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ、ローズゴールドモデルの反転中
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ、ローズゴールドモデルの裏面
レベルソ・トリビュート・クロノグラフは私の頼りない手首にもよくなじんでくれて、この薄さが大きなケースの形状をカバーしていた。なんだかキットカットのバーを何本もつけているような気分だ。SS、RGのバージョンともにアルゼンチンの伝統的なポロブーツメーカーであるカーサ・ファリアーノ社(チャールズ王が身に着けるようなブランド)製の、キャンバスとレザーのコンビネーションとオールレザーの2本のストラップで提供。JLCは今回、SSとゴールドの両方にキャンバスレザーのストラップをセットして発表している。SSクロノグラフでは効果的だったし、このような形で身につけたいと思ったのだが、RGのほうはドレスアップした時計をドレスダウンさせようとするあまり、スーツに白いスニーカーを履くオヤジのように少し頑張りすぎているように感じた。

ここまで読んでいただけたらおわかりかと思うが、見た目だけでなく価格も含めて、私はSS製のほうがずっと気に入った。SS製のレベルソ・トリビュート・クロノグラフは321万2000円、RGモデルは563万2000円(ともに税込)となっている。高値ではあるが、高級な自社製クロノグラフの水準からは大きく外れてはいないため比較対象が思い浮かばない。またブティックのみの展開となり、発売当初から入手が困難なようだ。私にとってSS製クロノグラフとは真のスポーツウォッチ(ダイバーズやフィールドウォッチ、ジェンタデザインの時計)とオールドスクールなドレスウォッチの境界線を完璧に超えており、両者のあいだに位置するドレススポーツウォッチというジャンルを定義、または再定義している(新しいショパールのL.U.C 1860などもこれにあたる)。

ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフのリストショット
私はレベルソ・トリビュート・クロノグラフを、Watches & Wondersで真に驚かされたものと呼んでいる。レベルソ・クロノグラフ自体が驚きなのではなく(以前にも存在していたから)、JLCとレベルソが持つ両面のよさ、つまりシンプルで時間表示だけの歴史と、JLCを真の時計メーカーとして際立たせる超複雑な時計製造(ジャイロトゥールビヨンやクアドリプティック)のバランスがとれていて、それがうまく表現されているからだ。レベルソ・トリビュート・クロノグラフは、JLCが誇る時計製造のすべてを美しくも身につけられるパッケージへ凝縮している(もしくは、あったとしても人に気付かれないくらい目立たないものにしている)。クラシックなドレスウォッチをモダンにアレンジしたモデルでありながら、もう一方で素晴らしい新型クロノグラフキャリバーを披露しているのだ。

JLCの両面を見せる、それこそがレベルソを完璧に使いこなすことなのだという風に。

ブライトリング アビエーター クロノグラフのまったく新しいコレクション、クラシック アヴィ クロノグラフ 42の新作が発表。

2021年に発売された兄弟分であるスーパー アヴィ 46mmと同様、これらの新しいリリースも4機の伝説的な航空機に敬意を表している。デザインを気に入っていながらもやや小振りな時計を好む人のために、より一般的に着用できるサイズが提供されたのだ。

新作はそれぞれの航空機にちなんで、数種類のカラーバリエーションを用意している。F4U コルセアはブルーダイヤルとスティールベゼルモデル、P-51 マスタングはブラックダイヤルにSSベゼル、ブラックダイヤルにローズゴールドケースの2種類、カーチス ウォーホークはグリーンダイヤルにSSベゼル、そしてデ・ハビランド社のモスキートはブラックダイヤルにホワイトのカウンター、ポリッシュとサテン仕上げのブラックセラミックベゼルを組み合わせている。いずれもラチェット式の双方向回転ベゼルを備え、フォールディングバックル付きのカーフスキンレザーストラップ(ラグ幅は22mm)、またはバタフライクラスプ付きのSS製5連ブレスレットが付属する。

新作はすべて約48時間のパワーリザーブを持つ、自動巻きのブライトリング Cal.23を搭載。4分の1秒クロノグラフ、30分積算計、12時間積算計を有している。これらのムーブメントはSS(または18KRG)のケースに納められており、サイズは直径が42mm、厚みが14.7mm、ラグからラグまでの長さは48mmとなっている。また100mの防水性、ソリッドな裏蓋、そして各モデルとリンクした航空機のエングレービングを施している。
スーパー アヴィ B04 クロノグラフ GMT 46 モスキート ナイトファイター。

これらの商品(42mm)に心打たれなかった人のために、ブライトリングはスーパー アヴィとコ・パイロットシリーズ(編集注記:新作のモデル名は初代と同じREF.765 アヴィとなっている)のふたつの新しい時計も登場している。まずひとつ目はブラックセラミック製のスーパー アヴィ B04 クロノグラフ GMT 46 モスキート ナイトファイターで、46mm×15.9mmという存在感を放つ大きさに。COSC認定のブライトリング マニュファクチュール Cal.B04を搭載し、約70時間のパワーリザーブ、コラムホイール/垂直クラッチ式クロノグラフ、時・分・秒、デイト、そして第2タイムゾーンを備えている。またチタンとサファイアでできたシースルーバックを採用している。

最後のニューモデルは、シンプルでクラシックな41mmの逆パンダクロノグラフ、アヴィ REF.765 1964 リ・エディションだ。アモルファスダイヤモンドライクカーボン(ADLC)コーティングされたSSベゼルを備えている。この時計は手巻きのコラムホイール、垂直クラッチのブライトリング・マニュファクチュール Cal.B09を搭載し、約70時間のパワーリザーブを実現し、より現代的で信頼性の高いムーブメントでありながら、ヴィンテージスタイルの1本を手に入れることができる。なお裏蓋はスナップ式のSS製ソリッドケースバックを採用し、防水性は30mだ。

価格はクラシック アヴィモデルが66万円から、F4U コルセアモデル(SSブレス)が69万8500円、スーパー アヴィ B04 クロノグラフ GMT 46 モスキート ナイトファイターが151万2500円で、そしてアヴィ REF.765 1964 リ・エディションが164本の限定生産で105万500円(すべて税込)となっている。

ああ、これらの新作には解き明かすべきことがたくさんある。まずは新しいものから始めたからそれについて取り掛かろう。

背の高い私は友人から 、大きな時計をつけた方がいいとよく言われるのだが、ブライトリングのスーパー アヴィ クロノグラフは、私の個人的な好み(それと7.25インチ/約18.4cmの手首)的に大きすぎるといつも思っていた。そんななかこの新しいクラシック アヴィ クロノグラフ 42は、頑丈なツールのアビエータークロノグラフのような伝統的なサイジングには合わないかもしれないが、しかしすべてがクラシカルな完全再現であることはなく、現代の市場や好みに合わせる必要があるのだ。また業界ではしばらくのあいだ、腕時計のサイズを大きくしてきた経緯があったが、このつけ心地のいい選択肢が増えたことは単純にうれしいことだ。

私は普段ブレスレット派だが、クラシックなスタイルの時計においては、上の写真のウォーホークやモスキートのようなストラップに引かれる可能性が高い。どれも美観的には素晴らしいパッケージのように思える。つけたときの感触が楽しみだ。小振りなクラシック アヴィモデルがおよそ70万円というのは、(ユーザーが)ブライトリングに期待しているとおりの価格だと思うし、しかもこのサイジングによってより多くの人の手首に合うようになるだろう。

最後の2モデルについては、ブライトリングが表と裏の正面2枚ずつしか写真を提供していないため判断を下すのが難しい。今はブラックセラミック(またはどんなセラミックでも)が大流行しているようだし、新しいスーパー アヴィの需要は間違いなくあると思う。個人的にはあの時代のパイロットクロノグラフが大好きだから、アヴィ REF.765 1964 リ・エディションのほうに興味がある。ただ164本だけしか製造されないため、きっと私が実機を目にする前に売り切れてしまうのだろう。

基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: クラシック アヴィ クロノグラフ 42/P-51 マスタング/トリビュート トゥ ヴォート F4U コルセア/カーチス ウォーホーク/モスキート(Classic Avi Chronograph 42/P-51 Mustang/Tribute To Vought F4U Corsair/Curtiss Warhawk/Mosquito)、スーパー アヴィ B04 クロノグラフ GMT 46 モスキート ナイトファイター(Super Avi B04 Chronograph GMT 46 Mosquito Night Fighter)、アヴィ REF.765 1964 リ・エディション(Avi REF. 765 1964 Re-Edition)
型番: P-51 マスタング…A233803A1B1A1、A233803A1B1X1、R233801A1B1R1、R233801A1B1X1、トリビュート トゥ ヴォート F4U コルセア…A233801A1C1A1、A233801A1C1X1、カーチス ウォーホーク…A233801A1C1A1、A233801A1C1X1、モスキート…Y233801A1B1A1、Y233801A1B1X1、スーパー アヴィ…SB04451A1B1X1、アヴィ REF.765 1964…AB09451A1B1X1

直径: 42mm(クラシック アヴィ)、46mm(スーパー アヴィ)、41mm(アヴィ REF.765 1964)。
厚さ: 14.7mm(クラシック アヴィ)、15.9mm(スーパー アヴィ)、14.05mm(アヴィ REF.765 1964)。
ケース素材: ステンレススティールまたはローズゴールド(クラシック アヴィ)、セラミック(スーパー アヴィ)、ステンレススティール(アヴィ REF.765 1964)
文字盤: ブルー、ブラック、逆パンダ、グリーン(クラシック アヴィ)、ブラック、コントラストカラーのアンスラサイトのクロノグラフカウンター(スーパー アヴィ)、逆パンダ(アヴィ REF.765 1964)。
インデックス: アラビア数字またはバーインデックス
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 100m(クラシック アヴィとスーパー アヴィ)30m(アヴィ REF.765 1964)
ストラップ/ブレスレット: レザーストラップまたはブレスレットオプション(クラシック アヴィ)、ラグ幅24mmのブラックミリタリーカーフスキンレザーストラップにチタン製フォールディングクラスプ(スーパー アヴィ)、ブラックのヴィンテージ風レザーストラップにピンバックル(アヴィ REF.765 1964)

The Classic AVI P-51 Mustang
ムーブメント情報
キャリバー: ブライトリング 23(クラシック アヴィ)、ブライトリング マニュファクチュール B04(スーパー アヴィ)、ブライトリング マニュファクチュール B09(アヴィ REF.765 1964)
機能: クラシック アヴィ…時・分・秒、振動ピニオン、4分の1秒クロノグラフ(30分積算計、12時間積算計)、スーパー アヴィ…時・分・秒、日付、セカンドタイムゾーン、コラムホイール、垂直クラッチ、4分の1秒クロノグラフ(30分積算計、12時間積算計)、アヴィ REF.765 1964…時・分・秒、コラムホイール、垂直クラッチ、4分の1秒クロノグラフ(15分積算計、12時間積算計)
直径: 30mm(すべて)
厚み: 7.9mm(クラシック アヴィ)、8.33mm(スーパー アヴィ)、6.73mm(アヴィ REF.765 1964)
パワーリザーブ: 約48時間(クラシック アヴィ)、約70時間(スーパー アヴィとアヴィ REF.765 1964)
巻き上げ方式: 片方向巻き上げ式の自動巻き(クラシック アヴィ)、ボールベアリングによる両方向回転式自動巻き(スーパー アヴィ)、手巻き(アヴィ REF.765 1964)
振動数: 2万8800振動/時(すべて)
クロノメーター: あり、COSC認定済み(すべて)

価格 & 発売時期
価格: クラシック アヴィ クロノグラフ 42…P-51マスタングはSSモデルが66万円(レザーストラップ)と69万8500円(SSブレス)、RGモデルが249万1500円(レザーストラップ)と486万2000円(RGブレス)/トリビュート トゥ ヴォート F4U コルセアは66万円(レザーストラップ)と69万8500円(SSブレス)/カーチス ウォーホークは66万円(レザーストラップ)と69万8500円(SSブレス)/モスキートは68万2000円(レザーストラップ)と71万5000円(SSブレス)、スーパー アヴィ B04 クロノグラフ GMT 46 モスキート ナイトファイターは151万2500円、アヴィ REF.765 1964 リ・エディションは105万500円(すべて税込)
発売時期: 発売中
限定: アヴィ REF.765 1964のみ164本限定

リスタートから2年が経ってからの完全新作。

880 メカニカルは、国産のファースト“フライヤー”GMTとして価値のあるモデルだ(少なくとも僕にとっては)。

イベントで、GMTウォッチを検討しているという男性と話をした。すでにダイバーズ、クロノグラフ、パイロットとほかのカテゴリでは意中の時計に出合っているものの、GMTウォッチにおいてはそもそもまだ手にしたことがなく、ファーストGMTとして何を選ぶか迷っているのだという。僕自身も(旅行需要の回復を見越してか)各ブランドからリリースが続いているなかで関心が高まっていたところだったので、このテーマでしばし盛り上がった。GMTウォッチを特に機械式時計で探す場合、その入り口のハードルはまだまだ高いように感じている。クロノグラフやダイバーズなどほかのカテゴリと比べてそもそもの選択肢が少ないうえに、トゥルーGMT……、

GMT針だけ独立して調整可能なタイプのGMTウォッチ。詳しくはこちらから)を求めるなら予算に多少の余裕も必要になる。だからこそみんな、出来のいいフライヤーGMTウォッチが30万円以下で発表されると聞けば我先にと飛びつくし、同じプライスレンジにあるモデルと積極的に比較をしたがるのだ。

ゆえに、2021年に再始動してからまもなく2年が経とうとしているシチズンのシリーズエイト(Series 8)から、フライヤーGMTがリリースされると聞いたときは胸が躍った。過去のモデルを見ている限り30万円以下で提供される可能性は高かったし、何より870メカニカルなどでも見られた工業プロダクト的なある種そっけないデザインは僕の大好物だ。おそらく「880メカニカル」は僕のファーストGMTウォッチになるぞと期待をしながら、対面の日を指折り数えていた。

ブラック文字盤に黒×青のツートンベゼルを備えたRef.NB6031-56E。

すでにジェームズによるIntroducingもあるが、簡単に紹介しておく。880 メカニカルはシリーズエイト(Series 8)再始動から実に2年越しの完全新作だ。ブラック文字盤とブルー文字盤の通常モデル2型(ともに税込22万円)と、ゴールドカラーの限定モデル(税込24万2000円)の計3型でこの秋に展開される。いずれもモダン&スポーティな機械式時計ブランドを標榜するシリーズエイトのコンセプトにのっとり、エッジの立った金属感の強いSSケース&ブレスを備え、シチズンによる自動巻きムーブメント9054を搭載している。ケース径は41mmで、厚さは13.5mm。870 メカニカル(10.9mm)や831 メカニカル(10.1mm)と比較すると若干厚みが出ているものの、GMT機構や両方向回転ベゼルが追加されていることを考えれば許容できる範囲だ。

さて、具体的な掘り下げを行う前に告白しておきたい。880メカニカルの実物を初めて目にしたとき、実は素直に飲み込むことができなかった。というのも、880 メカニカルはこれまでのシリーズエイトの文脈から少し外れたところにあるように見えたのだ。僕はシリーズエイトのGMTモデルと聞いて、フラットな文字盤にワントーンのメタルベゼルを備えた(それこそエクスプローラー IIのような)ソリッドなモデルを想像していたし、それに近しいものが提供されると勝手に思い込んでいた。だが、今回の880 メカニカルがシリーズエイトのGMTウォッチとしてどこを目指したモデルなのか、一度冷静になって思案を巡らせていると自分なりの答えが少しずつ見えてきた。結論から言うと、これはまさにシリーズエイト、ひいてはシチズンらしさを詰め込んだ、国産機械式フライヤーGMTのエントリーモデルだ。

SS素材にゴールドIPを使用した世界1300本限定モデル。

GMTウォッチ入門者を狙い撃ったデザイン
880メカニカルは特に通常モデルに関して、ベゼルに実に潔い配色がなされている。いわゆる“ペプシ”であり、“バットマン”だ(限定モデルのゴールドを“ルートビア”とする声もある)。思わずニンマリとした人も多いことだろう。僕は改めて880 メカニカルと向き合ったとき、これは実にシチズンらしい手法だと思った。

そもそもシリーズエイトのリブランディングにあたり、シチズンが掲げたキーワードは“モダン・スポーティ”だった。企画当時に興っていたファッションのカジュアル化、スポーツウォッチ需要の高まりを受けて導き出されたもので、830・831・870メカニカルに共通するブレスレット一体型の構造やエッジを立てたケース形状に色濃く現れている。これは2020年ごろに引き続きトレンドの中心であったラグジュアリースポーツ的な時計作りをわかりやすく(2体構造のベゼル、白蝶貝ダイヤルなどの味付けがあったとしても)表現しており、8年の時を経てのシリーズエイト再始動にあたって、時計愛好家と機械式時計入門者の別を問わず人々の耳目を集めるのに十分な役割を果たしていたと思う。

そう考えると、2年ぶりの完全新作であり、GMTウォッチトレンドのさなかに発表される880 メカニカルがそのエントリーモデルとなるにあたり、この配色をとったことにも納得がいく。これはGMTウォッチのアイコンとして万人がひと目で理解できるデザインだ。今後、異なるベゼルのバリエーションが登場する可能性があったとしても、初手としては間違いない選択だろう。

ベゼルのカラーリング以外にも、880 メカニカルに込めた意図が読み取れるディテールがある。例えば、シースルーバックの採用だ。これは、よっぽど緻密なあしらいを施したムーブメントを搭載した場合か、もしくは何かしらのカテゴリでエントリーモデルとしてリリースされるときに多く見られる、機械式時計に対する所有欲をわかりやすく刺激する手法である。過去のシリーズエイトでは、時計本体の厚みやそこから派生するつけ心地を考慮してソリッドバックが装備されていた。今作はムーブメントとして新開発のCal.9054を搭載してはいるが、美観のうえでの大きなアップデートは見られない。それにもかかわらず今作でシースルーバックを採用した点には、機械式時計入門者にも改めてアピールしたいという意図が感じられる。ソリッドバックを採用することで、この価格帯でのライバル、ミドー オーシャンスター GMTの厚さ13.3〜13.4mmに肉薄することができたかもしれない(880メカニカルは13.5mm)。しかし事実、機械式時計入門者ではないものの、GMT初心者の僕は少なからずワクワクした。

また、ブレスレットにも注目したい。880 メカニカルのブレスは、テーパーが入ったことで既存のシリーズエイトのそれとは性格が異なるものとなった。ぱっと見では小さな変化だが、これによりさりげないドレス感が生まれている。ひとコマひとコマに施された丁寧な研磨が醸し出す高級感も手伝い、同機を大人の仕事着にもマッチする1本に引き上げている。

880 メカニカルでは、限定モデル以外のシリーズエイトでは初めてシースルーバックが採用された。

なお、やはり880 メカニカルがシリーズエイトの流れにあるのだと強く実感するポイントもあった。それが、2体構造なども利用した繊細かつ立体的な磨き分けだ。例えば870 メカニカルでも、ベゼルを2体構造としてそれぞれに異なる処理を行うことで、正面の顔に奥行きが出るように配慮されていた。下の写真を見てもらえばわかるが、880 メカニカルにもその効果は如実に現れている。880 メカニカルではケースそのものを2体構造とし、ヘアラインの“キメ”や向きを変え、エッジにポリッシュを施すことで、サイドにも立体的で見応えのある美観を獲得した。個人的には、リューズに目立つロゴや刻印を刻まなかったことも賞賛したい。このビューの主役はあくまで緻密な磨き分けにある。

そして、シリーズエイトらしい工業製品感を強調するブレスのエッジの立て方、粗くかけられたヘアラインも同様だ。880 メカニカルがちゃんとシリーズエイトの文脈にあると再認識させてくれる。

ピッチが異なるヘアラインの繊細な使い分けは、2体構造のなせるワザだ。

あえて今項を最後に持ってきた。880 メカニカルにおいてもっとも象徴的なディテールである、ダイヤルのあしらいについてだ。ブランドいわく、日本的な紋様である市松模様に東京の夜景、立ち並ぶビル群を掛け合わせた柄だという。なるほど、確かに中心から左右対称にランダムな凹凸が広がっている。シチズンが施した都市型チェッカーは、強化ガラスをインサートしたベゼルの存在を考慮したものだろう。ベゼルが鮮やかに光を反射する分、ダイヤルは場所に応じてやや控えめに主張をする。このバランスを狙ってどれだけの調整を行なったかはわからないが、実際に手に取ってみて、素直に素晴らしいと思った。

これはいわばシチズンがシリーズエイトで表現しようとしているモダンさの一環であり、エントリーフライヤーGMTというだけではない存在に880 メカニカルを位置づけようとする“らしさ”だ。東京発、世界基準のフライヤーGMT。そのポジションを狙い撃たんとする、シチズン シリーズエイトの意図が感じられるように思う。

光の当たり方により、この新しい市松模様は、ベゼルのきらめきと調和する独特の陰影を見せる。

繰り返すが、880 メカニカルはシリーズエイトの完全新作である。リスタートから2年の沈黙を経て(そのあいだに周年モデルとしてカラーバリエーションがあったとしても)、ブランドとして次のステップに向かおうという気持ちが込められている。その答えがトレンドとなりつつあるGMTウォッチの入り口としての提案であり、現代人に必須となるディテールの結集だ。そのスペックに対しては(第2種の耐磁性能や防水性能を含め)信頼しているし、価格に対しても文句はない。あとは、そのなかに垣間見える個性を含めて気に入ったならば完璧だ。僕はひと足先に人生初のフライヤーGMTのポジションを880 メカニカルに託そうと思う。たとえこの先、僕が当初想定していたようなワントーンベゼルでフラットな文字盤のGMTウォッチがシリーズエイトから出たとしても、こんなにブランドの意図がありありと表現されたフライヤーGMTにはならないだろうから。